宮澤ミシェルが今、改めて考える久保建英の「18歳はもう若くな...の画像はこちら >>

久保建英とアンス・ファティについて語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第119回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、久保建英とアンス・ファティについて。18歳になった際に久保が発言した「世界では18歳はもう若くはないので」という言葉。今、改めて考えると、その中には現在注目を集めているバルセロナの16歳、アンス・ファティへの意識もあるのではないかと宮澤ミシェルは解説する。

*****

久保建英を取り上げる時に、日本では18歳という若さをクローズアップするよね。私は長くメディアで仕事をしているから、そうした切り口になってしまう事情も理解しているけれど、そうじゃないと違和感は感じるだろうな。

久保が「世界では18歳はもう若くはないので」と発言したとおり、世界のサッカーでは18歳よりも下の年齢の選手がトップレベルで頭角を現している。

そうした舞台で勝負している久保にしたら、18歳は若くはないし、結果を追い求めるのは当然なんだよな。

久保がこうした発言をするのは、日本のメディアに対しての牽制や、若くても活躍している選手がいるというのもあるだろうけど、バルセロナの16歳、アンス・ファティのような選手がいるということを一緒にプレーして身をもって知ってるからだったのかなと思うんだよね。

ファティは今季からバルサのトップチームに昇格すると、本拠地カンプノウでの第2節ベティス戦に78分から出場してラ・リーガにデビュー。続く第3節では後半から出場してクラブ史上最年少ゴールを決めちゃった。

期待の新星が登場したことでバルサのお膝元のメディアは大々的に取り上げていて、ファティの素晴らしさを際立たせるために、何度も久保は引き合いに出されているんだよね。まあ、バルサ贔屓の人たちにしたら、「自分たちのバルサを袖にした久保よりも、もっとすごい選手が現れたんぜ」っていう面もあるとは思うよ。

ファティがすごい才能に溢れた選手なのは間違いない。ただ、久保とはプレースタイルが違うから、単純に比較するのは無理があるよ。ファティの最大の特長はスピード。たとえるなら昨季にレアル・マドリードでブレイクしたビニシウスのような感じかな。ボールタッチは大きくなることもあるんだけど、それをミスにしない無茶苦茶な速さがある。

そのファティがバルサの下部組織に入ったのは10歳だった2013年なんだけど、1歳違う久保とも一緒にプレーしていたらしいね。

この年に日本であった大会にもふたり揃って出場していたそうだよ。いまとなってみれば、豪華なメンツだよな。

ファティのルーツは西アフリカのギニアビサウにあるんだけど、いまはスペイン国籍を取得しようとしているらしいね。スペインにはファティのほかにも、20歳前後には才能のあるタレントが数多く現れているから、スペインがW杯王者を奪還する日も遠くないかもしれないね。

バルサではファティに注目が集まっているけれど、21歳のカルレス・ペレスもいい選手だよ。今夏にヴィッセル神戸との親善試合で2ゴールを決めた選手と言ったら、納得する人も多いんじゃないか?

ファティとペレスのほかにも、ウルグアイ出身で191cmある20歳のロナウド・アラウホというCBも成長が楽しみだよ。

神戸戦は先発出場していたけれど、普段はまだバルサBでプレーしている。ただ、トップチームに帯同はしていて、第8節のセビージャ戦ではついに交代出場でラ・リーガデビューをした。まあ、厳しいジャッジで退場を食らっちゃったんだけど、それでもポテンシャルの高さは垣間見せてくれたよ。ゆくゆくはディエゴ・ゴディン(インテル)やホセ・ヒメネス(アトレティコ・マドリード)のような存在になるんじゃないかな。

やっぱりバルサは下部組織出身の選手たちがガンガン活躍してもらいたいよな。体が大きいとかスピードがあるだけじゃ、バルサのサッカーは体現できないからね。

ファティにしろ、アラウホにしろ、バルサらしいボールの動かし方やポジションの取り方をちゃんと理解している。そこに1、2年後は安部裕葵が加わってくれたらいいよな。

いずれにしろ、類まれな才能を持った選手っていうのは、若い年齢から頭角を現すんだけど、その豊かな才能は、一般の人には伝わりにくいから年齢をクローズアップしちゃうんだよね。ただ、彼らが大きな花を咲かせられるかは、また別の話。久保にしろ、ファティにしろ、ここからが本当の勝負だからね。あまり騒がずに、若い選手がサッカーに集中できるように温かい目で見守っていきたいものですな。

構成/津金壱郎 撮影/山本雷太