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映画『アンダードッグ』で主演を務める森山未來氏(右)に、角田陽一郎氏が聞く!

『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。

前回に引き続き、現在公開中の映画『アンダードッグ』で主演を務める、俳優の森山未來(もりやま・みらい)さんにお話を伺いました。

* * *

――森山さんって、さまざまな困難を抱えた役柄を演じることが多いですよね。

森山 確かにそうですね。困難な道を行く人とか、バックボーンが原因で性格がこじれてしまった人とか。そういう人たちって、世間ではどうしても「関わっちゃいけない」と思われて、隅に寄せられがちですけど、逆に自分はそういう人たちと対話することが大事だと思っていて。かといって、別にそういう役ばかりやりたいってわけでもないですけど(笑)。

――『アンダードッグ』で演じた主人公もまさにそういう人ですよね。

森山 けっこうトレーニングしましたね。もともと体は動かしているので、絞ること自体は苦じゃなかったんです。むしろ、格闘技をしてこなかった分、人を殴るという行為が初めてだったので、その感覚になじめるのかという不安はありました。

例えば、誰かとけんかする夢を昔からたまに見るんですけど、いざ殴ろうとしても腕がふにゃっとなってしまって殴りきれないんです。なので、「芝居でもうまく殴れないんじゃないかな?」と思っていたんですけど、スパーリングなんかを重ねたおかげで全然殴れるようになりましたね。

――かなりの練習量ですよね?

森山 そうですね。

フリとして覚える程度にとどめることもできたんですが、実際に誰かを殴る感覚、誰かに殴られる感覚を知りたかったんです。どのリーチまで腕を伸ばせば拳が相手に当たるとか、逆に相手の拳に対して自分はリアクションを取れるのかとか。そういうのって知らなかったら反射的に体が動かないので。

――森山さんが演じた末永晃はかつてチャンピオンベルトに手をかけながらも敗北し、現在は「噛ませ犬(=アンダードッグ)」としてボクシングにしがみつくという設定です。

森山 僕自身は「ずっと悔しがって生きていくには7年とか8年は長すぎる」と思うんですよね。むしろ、もはやいろんな感覚が麻痺(まひ)しているのかもしれない、小さな言い訳を自分にしながら、あえて平然を装っているんじゃないか。

そんな気持ちを持ちながら演じていました。

――追い込まれた印象の晃ですが、作中では「もうパンチドランカー(頭部への衝撃を受けすぎて、認知症に似た症状が出ること)だよ」というセリフもありました。

森山 そうですね。ただ、本編では、最後の試合以外はそこまで殴られていないんですよ。思い切り殴られる前に自分からダウンしちゃうというか、立っていられないというか。

――お父さんとの関係でもそうだし、あらゆることにおいてそうですよね。

森山 (北村)匠海(たくみ)くんが演じる龍太との最後の試合では、お互いボコボコになるまでやってますけど、それまでは噛ませ犬的な扱いでしたしね。体がダメなんじゃなく、気持ちの問題だったんだと思います。

――では最後に本作の紹介を。

森山 あまりコロナにかぶせてもよくないと思うんですけど、図らずもこういう状況になってしまって、何かにすごく押し込められているような生活をしている人が多いと思います。再起をかけ戦う男たちの姿を通じて、そういう人たちの背中を押せるとうれしいですね。

角田陽一郎×森山未來(俳優)「実際に誰かを殴る感覚、誰かに殴られる感覚を知りたかった」

●森山未來(もりやま・みらい)
1984年生まれ、兵庫県出身。

1999年に舞台デビュー。幼少時よりジャズダンス、タップダンス、クラシカルバレエ、ストリートダンスなどを学ぶ。2013年秋より文化庁文化交流使として1年間イスラエルなどに滞在

■映画『アンダードッグ』公開中

角田陽一郎×森山未來(俳優)「実際に誰かを殴る感覚、誰かに殴られる感覚を知りたかった」

©2020「アンダードッグ」製作委員会

構成/テクモトテク 撮影/山上徳幸 スタイリング/杉山まゆみ ヘア&メイク/須賀元子