棋士・羽生善治の敗北観

棋士・羽生善治の敗北観
 勝負の世界にあるもの。それは勝利だけではありません。勝利の裏には敗北があります。
 例えばプロ野球で歴代最多勝利数を誇る金田正一氏ですが、実は同じく歴代最多の敗北数も記録しています。
 圧倒的な強さを誇る人間でも、敗北は一度ならず経験するでしょう。では、彼らはそうした「敗北」をどのように捉えているのでしょうか。

 棋士の羽生善治さんが著した『大局観』(角川書店/刊)の中では、「負けること」という章タイトルで羽生さんの敗北観が語られています。

■負けるには必ず理由がある
 よく「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」といったものですが、羽生さんは本書でもこの言葉を引用し、好運な勝利はあっても、不運な負けはないといいます。つまり、負けた理由が必ずどこにあるのです。そして、その原因を探り、問題点を修正することができるかが鍵となります。
 羽生さんは、公式戦だけで四百局以上負けてきたといい、少なくとも四百以上の改善点を、1つ1つ変えていくしかないといっています。

■負けを変化のキッカケとする
 2003年から2004年、羽生さんは次々とタイトルを奪われ、一冠になってしまいます。しかし、敗北の分析を行い、自分のやり方ではいけないことに気づきます。周囲の変化の中で、自分のスタイルをどう貫き、新たにどのようなスタイルをつくり上げていくかが大事だと述べます。
 羽生さんは棋士の大切な資質の1つとして「打たれ強さ」をあげます。そして、1つ失敗したからといってくじけていては、プロとして生きていくことは出来ないと言います。負けるということは、自分を変える大きなキッカケになります。羽生さんは「変化の極端に速い現代においては、むしろ適当な負けも必要不可欠の要素ではないか」と思っているそうです。

 『大局観』は羽生さんの棋士生活25年と満四十歳のまとめとして執筆されたもので、勝負に対する羽生さんの考え方が網羅されています。

 リスクとは、ミスとは、逆境とは。単純な「勝利」や「敗北」を超えたところにある、羽生さんの勝負観は、ビジネスパーソンにとっても参考にできる部分があるはずです。
(新刊JP編集部/金井元貴)


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