2011年7月16日、富士急ハイランドで開業した大型ローラーコースター「高飛車」。最大落下角度は直角をはるかに超える121度、ギネス世界記録を保持しています。
絶叫モノが好きな人にとっては、まさに格好のエモノといっても良いでしょう。
 どんどん進化していくジェットコースターですが、子どもの頃、ジェットコースターが宙返りをする(これを「ループ」というそうです)様子を見て、真っ逆さまになっているのにどうしてコースターは落ちないのだろう、そう幼心に思ったことがある人は多いのではないでしょうか。

 『ちょっとわかればこんなに役に立つ 中学・高校物理のほんとうの使い道』(京極一樹/著、実業之日本社/刊)によれば、ジェットコースターが落ちないためには十分な遠心力が必要なのだそうです。逆に言えば、十分な遠心力を確保すればコースターが宙返りをしても、その最中に落ちることはありません。
 では、十分な遠心力を確保するための条件とはどのようなものでしょうか?
 円を落ちずに回りきる、言葉を専門的に言い換えると「レールから受ける垂直抗力(斜面から押される反作用力)が正である」ためには、半径の何倍の高さからスタートすれば良いのか、という計算をする必要があります。
 その答えは半径の5/2倍(2.5倍)。
つまり、円の半径が20メートルだったら、50メートル以上の高さからスタートすることで、落ちずに回りきることができるということになります。さらに、スタートが回転半径の5/2倍の高さであれば何回でも宙返りをできるそうですが、これは摩擦や風圧による速度の低下は考えないことを前提としているので、実際は途中で止まってしまいます。
 また、冒頭にあげた「高飛車」の最高到達地点は43メートルですが、仮にこの高さからスタートすると、半径17.2メートル、直径34.4メートルのループを回れる計算となります。

 ちなみに、この「遠心力」は宇宙ステーションやスペースコロニーなどにおいて重力を生み出すために活用されています。詳しい内容は本書などを参考にしていただくとして、私たちの生活の至るところに物理で説明できるところがあります。そして宇宙開拓など未来を切り開くために必要な示唆をもたらしてくれるのも「物理」だといえます。

 特に物理に対し、学生時代に苦手意識を持ってしまった人はなかなか触れる機会がないのではないでしょうか。しかし実生活に関わる物理に少しでも触れてみることで、毎日の見方が変わるかも知れませんよ。
(新刊JP編集部/金井元貴)


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