SNSやブログが私たちの生活の中に定着して以来、自分の交友関係が画面の上で見えるようになった。しかし、実際にあまり会ったことのない人や、一度も顔を合わせたことのない人たちも、本当に「自分とつながっている」といえるのだろうか?

 「つながり」とは何か。
誕生日占いの著書などで知られるスピリチュアルコーチのはづき虹映さんは、本当の意味の「つながり」を解き明かし、取り戻すための8つの物語を『ワンピース』(あさ出版/刊)と題してつづっている。

 「毒舌美食ブロガー」として、その業界では少し知られた存在である派遣OLの「私」。その日もブロガー仲間3人を引き連れて、評判になっているイタリアンのお店に足を運ぶ予定だった。ところが、メンバーの一人であるY子が遅刻。「もう待ってても仕方ないから、放っておいて行こうよ!」と3人で店に向かった。
 昼時の小さな店内は混み合っており、若い夫婦が忙しそうに働いている。

 4人で予約していたため、テーブルには4名分セッティングされていたが、「私」たちは気にせず料理が運ばれてくるのを待った。

 ところが、前菜は4人分運ばれ、お水もなかなか出てこない、料理と料理の間のインターバルが長いなど「私」のお眼鏡に適うものは味しかなかった。怒った「私」たちはブログで辛口の批評を書いてアップし、大きな反響を呼ぶが、それはやがて「炎上」へと変わっていくことになる。
 そんな中、「私」はコメント欄で「つながり」と名乗る人からの「本当にそうでしょうか」というコメントを見つける。どこか心が引っかかるが、「私」の目の前にある現実は、話が膨らみすぎて完全に被害者扱いされているネット上の「私」だ。訴訟するのではないかとさえ書かれており、お店のサイトにはひどい書き込みが増えていた。

 ブロガー仲間たちのエントリはとっくに削除されており、メールを送ってみても返信がない。こんなことになるなんて。そんなとき、「つながり」という人のコメントを思い出し、なんとかコンタクトを取ってみようと試みるが…。

 ネットやメールは、常に多くの人と自分がつながっていられるようにしてくれた。それは同時に、自分がネガティブなエネルギーを発すれば、そのネガティブなエネルギー同士が増幅しながらつながっていくことでもなる。何気なく発したエネルギーは、自分だけでは歯止めが効かないところまで行き着いてしまうのだ。


 友人、恋人、家族をはじめとした8つの物語に出てくる真理カウンセラー・津曲(つながり)という女性は、人と人のつながりが希薄になってしまったところに現れ、主人公たちに本当の「つながり」を教えてくれる。
 「ワンピース」や「つながり」というキーワードから、国民的漫画『ワンピース』を連想する人もいるかも知れないが、はづきさん自身は15年以上も前からこの「ワンピース」という言葉とその意味を知り、意識してきたという。最近の人間関係にどこか疑問を持っていたり、「つながり」のいびつさを感じることがあったら、この本を開いてみて欲しい。
(新刊JP編集部)