京極夏彦さんインタビュー(2)

京極夏彦さんインタビュー(2)
 出版界の最重要人物にフォーカスする『ベストセラーズインタビュー』!
 第53回目となる今回は、小説家・京極夏彦さんが登場です!
 京極さんの新シリーズ『書楼弔堂 破暁』(集英社/刊)は明治20年代の東京を舞台に、古今東西の書物が集う“弔堂”にやってくる文人や軍人らと、膨大な知識量を持ちながら何か過去を持つ主人のやりとりを描く、本をめぐる連作短編集。京極さんの別の小説シリーズと交わる部分もあり、ファンは必読の一冊です。
 さらに「書店とは何か」「本を読むこととはどういうことか」といったテーマも物語に重なるなど、読みどころの多い本作について、インタビューをしました! 今回はその第2回目となります。
(新刊JP編集部/金井元貴)

■『書楼弔堂』は「視点を空欄」にした小説

― この『書楼弔堂』という小説は「高遠」という、妻子を実家に置いてきて働きもせずにふらふらしている男の視点――というか、「高遠」の存在が中央にいて物語が進んでいきます。ただ、最後の章はその「高遠」が中心になるものの、それ以外の章においては、「高遠」がいてもいなくてもどちらでもよい存在のように思えたんですね。「高遠」がいなくても物語は成立してしまう。

京極夏彦さん(以下敬称略) 「高遠という人は“要らない人”ですね(笑)。全く世のため人のための役に立っていない。
明治というのは激動の時代といわれます。明治を舞台にする物語の多くは、時代立ち向かう英雄や、新たな時代を切り開いていこうとする偉人を中心に描かれることが多いんですが、別にそういうヒーローばかりがいたわけじゃない。いつの時代もそうですが、ぼーっとした人やびくびくした人や迷ってる人や、そういうグダグダな人の方が圧倒的に多かったはずです。明治維新があって、近代国家の礎が築かれていくなかで、じゃあ庶民は何をしていたのかというと、ほとんどの人は、“起きて、食って、

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