
青木さんの最新作『学校の近くの家』(新潮社刊)では、杉田一善(小学5年生)の目から見た学校、友達、親、先生、地域が書かれるが、そこには冒険も事件もファンタジーもない。
ただ、もちろん「単なる日常」でもない。そもそも小学生の目を通せば「単なる日常」などというものは存在しないのだ。
出版界の最重要人物にフォーカスする『ベストセラーズインタビュー』。第78回は青木淳悟さんの登場だ。その最終回をお届けする。
(取材・構成/山田洋介、写真/金井元貴)
■「大江文体」を目指して書かれた小説を誤って消去…
――この作品もそうですが、お話に「筋」を作らないということが青木さんの小説では徹底されている気がします。これはご自身のスタイルとして意識されていることなのでしょうか。
青木:ある時間の経過を書く時に、今書いた場面と時間的につながっている続きの場面を書きたくないとか、同じ場面が続かないように短く終えるとか、そういう「書き方」レベルでの好みはありますね。
今回の小説は連作短編で、一つ一つの話が必ずしもつながっている必要はなかったので、それならむしろ「本筋」を作るのではなく「ズレ」ていた方がいいなと思っていました。
ただ、それで予定していた6編を書き終えても「終わった感」がまったくなかったので、本になるタイミングで6編目の「11年間の思い出」を加筆したのに加えて、7編目を書き下ろして追加したんです。そうすれば何とかまとまるかなと。