
また、これら同時に社会システムを維持・拡張するための機能も果たしており、戦後、日本の経済が飛躍的に成長する上での重要な基盤となったことには違いない。
しかし、経済が成熟し、成長の時代が終わると共に個人の生き方は多様化。同時に共同体の衰退も指摘されるようになった。そして現在、衰退してしまった「共同体」に代わる「コミュニティ」が注目を集めているのだ。
本書『コミュニティを問いなおす』は、政策や都市論、国家論などマクロな視点からコミュニティを再考していく、「コミュニティ」を考えるための入門とも言える一冊だ。
本書ではまず、コミュニティを以下のように理解する。
「コミュニティ=人間が、それに対して何らかの帰属意識をもち、かつその構成メンバーの間に一定の連帯ないし相互扶助(支え合い)の意識が働いているような集団」(p11より引用)
そして、この理解を前提とした上で、多用な視点と豊富なデータから「コミュニティ」の現在を掘り下げていく。
近年、社会問題となっている独居老人の孤独死。これは、まさに個人が孤立する社会を直接的にあらわしているものである。誰かしらとつながりを持っていれば、亡くなる前に誰かが老人の変調に気づけたかも知れない。人と人のつながりが今の日本から消えつつあるのだ。