【 川奈まり子の実話系怪談コラム】 京都旅行(伏見の憑きもの)【 第四十九夜】

京都・龍谷大学のさる研究会で講演をさせていただいた2016年10月某日、私は伏見の町家に宿泊予約を入れていた。

事前に、このことを花房さんに話したところ、花房さんは「そんなところにお宿があったかしら」と不思議そうなお顔をなさった。作家の花房観音さんは、小説の名手でありながら、京都観光に携わって久しい現役のバスガイドでもある。

だからこそ、私が京都に行った際に、化野念仏寺はじめ嵯峨野方面の心霊スポットに案内してくださったわけで、京都府内の観光事情については、単に京都在住だからという領域を超えた知識をお持ちだ。

その彼女が、観光名所として名高い伏見稲荷大社の付近のその宿を知らないというのは意外なことだった。

「伏見稲荷の目と鼻の先ですよ。真ん前と言ってもいいぐらい。ご存じありませんか?」

「知りませんねぇ......。そんなところに町家さんがあったかしら?」

花房さんはしきりと首を傾げ、夕方、大学の講演前に宿に立ち寄ってチェックインするのだと私がいうと、一緒に宿までついていらっしゃった。

「あら、本当だ。でも、閉まっているみたい」

件の宿に到着してみたら、小体な町家はたしかにあったものの、玄関前の敷地と道路の境界にナイロン製のロープが張られ、そこから見えるガラス窓の中に人影もない。

宿のホームページによれば、その窓の奥では喫茶店営業もしているはずなのだった。

ふつうの家とかわらない大きさの玄関のドアも、がっちりと閉まっている。
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