「教授、お久しぶりです!」
試合前、いきなり私に声を掛けてくる人物がいた。その人物は乙倉健二・玉野光南高校サッカー部監督だった。
乙倉監督と私は、一緒にサッカーをした仲であった。あれは今から3年前の夏のこと。プリンスリーグ中国を岡山県に取材しに行ったとき。玉野光南VS米子北の試合を取材した後、乙倉監督ら玉野光南のスタッフの皆さんと意気投合し、いろいろ話をした後、「今から1年生チームとスタッフチームのゲームがあるので、出場していってくださいよ」と提案され、さっそくスパイクとソックス、ハーフパンツまでお借りして、玉野光南スタッフの一員として、試合に出場をした。
当時、私は32歳。前年にアキレス腱を断裂したばかりで、トレーナーの方にテーピングをグルグルに巻いてもらい、出場したことを覚えている。
あれから3年半の月日が経ち、駒沢陸上競技場での再会となった。県予選の決勝で、FC東京入団内定のFW平岡翼を擁する、優勝候補の作陽を相手に、1-1の同点の末に、PK戦でライバルを下し、実に9年ぶりの選手権出場を果たした。
本大会でも初戦で東北に勝利をすると、2回戦でも岐阜工を下し、ベスト16に進出。3回戦では強豪・星稜を相手に、高い連動性の守備で、攻撃をシャットアウト。
素晴らしいチームを作った乙倉監督。
「相手が攻め方を変化させても、選手たちは本当に集中して対応してくれた。来年(度)ももう一度、しっかりとチームを作り直して、『打倒・作陽』で頑張っていきたい」と意気込みを語ると、「これからも応援しています」と逆にエールを送ってもらった。
「またサッカーをしましょう」。
約束を交わし、乙倉監督は去って行った。
文=安藤隆人