『キャプテン翼』とタイ人Jリーガーがコラボ
 タイの首都バンコクの中心部、パヤータイ通りにあるフットサルコートが、見慣れたタッチのイラストで鮮やかに彩られた。上空から見るとコートの左半分に北海道コンサドーレ札幌のMFチャナティップ、右半分には横浜F・マリノスのDFティーラトンの巨大なイラストが広がっている。
コートいっぱいに描かれた両選手の足元には、「Yoichi Takahashi」のクレジットが添えられている。

 さらに、コートの横に立つ建物の壁には、今シーズンFC琉球でプレーしたFWシティチョーク・パソも含めて3人のタイ出身Jリーガーたちのイラストが並ぶ。その下には大空翼や日向小次郎といった漫画『キャプテン翼』のキャラクターたちも合わせて描かれている。バンコクの街中に突如として現れたタイ人Jリーガーと『キャプテン翼』のコラボレーションは、「Jリーグ×キャプテン翼・タイヒーローズプロジェクト」と題してJリーグが企画したものだ。

『キャプテン翼』の作者・高橋陽一氏が描いたイラストはタイ人Jリーガー3選手のもとに届けられ、その模様はJリーグの公式YouTubeやフェイスブックなどで動画で公開されている。高橋氏から3選手へのメッセージやイラストを手に喜ぶ3選手の反応などが収められており、チャナティップは日本語で「チャナ、めっちゃうれしいです」などと笑顔で語っている。
『キャプテン翼』はタイでも広く知られており、プロジェクトは現地でも大きな反響を呼んだ。

「アジア戦略」を進めるJリーグは、その重要拠点であるタイでこれまでもさまざまな取り組みを行ってきた。昨年末にはバンコクを走る高架鉄道であるバンコク・スカイトレイン(BTS)の車体にJ1全クラブの選手が描かれるなど、サッカーファン以外の層へのアプローチも積極的に展開している。その一環として今年はタイでも人気の漫画『キャプテン翼』が連載開始40周年を迎えたこともあり、タイ人Jリーガーたちとの夢のコラボがバンコクの地で実現した。

街中での露出で、さらなるJリーグの認知度向上を狙う
 Jリーグが2011年から本格的に進めてきた「アジア戦略」において、タイは最も成功を収めている国だ。チャナティップやティーラトンをはじめとするタイ出身の選手たちがJリーグで活躍するようになったことによる効果は大きく、タイでのJリーグへの注目度は急激に高まってきた。
タイ人選手が主力として活躍する札幌や横浜FMの試合を中心に、Jリーグの試合は毎節、多くのタイのファンに視聴されている。

 Jリーグは毎年、タイにおける海外リーグへの関心度調査を行っているが、その結果からもJリーグへの関心度が高まっていることがわかる。以前から東南アジアで圧倒的な人気を誇るプレミアリーグは別格として、近年のJリーグへの関心度はそれに続くラ・リーガやブンデスリーガとほぼ肩を並べる水準となっている。サッカーファンからは高い関心を集めるようになった今、今度は一般層の認知度も高めるためにスタジアム以外の場所でも「Jリーグ」を露出させようと試みている。

 タイ人Jリーガーと『キャプテン翼』がコラボしたバンコクのフットサルコートは、来年4月頃まではそのままの状態で残されることになっている。遠目から見ても目を引く大胆で鮮やかなイラストは、バンコクの多くの人たちの目に触れることになるはずだ。
11月に行われたオープニングイベントの様子は現地メディアでも取り上げられており、すでにJリーグの認知度向上に一役買っていることは間違いない。

 2010年代以降、タイリーグが本格的なプロリーグとして発展してきたことで、近年はプロを目指すタイのサッカー少年も急増している。Jリーグの「アジア戦略」を担当する株式会社Jリーグ グローバルカンパニー部門の小山恵氏によれば、「Jリーグでプレーしたいと考えるタイの選手も確実に増えている」という。今回のプロジェクトのような草の根の活動は、タイの選手たちの目をさらにJリーグへ向けさせることにもつながるはずだ。

文=本多辰成