森保一監督は5日の中国代表戦でフル出場した久保建英に代わって鎌田大地を先発に送り出しただけで、手堅いメンバーで挑んだ。もちろんシステムも3-4-2-1を継続。相手が4-4-2のコンパクトで強固な守備ブロックを形成してきたため、日本はボール支配率では大幅に上回ったが、決定機は思うように作れない。
ボランチの遠藤航と守田英正も最前線の上田綺世に縦パスをつけようとタイミングを窺ったが、失ってカウンターを繰り出されるようなシーンも目についた。
「ボールをもっと持ちながら前進したかったんですけど、それを考えすぎて、ダイナミックさが失われたり、(自分の)配置に入りすぎて流動的な動きがしづらい前半だった」と守田は難しさを吐露した。
それでも、33分に鎌田がポケットの位置に抜け出して折り返したボールが相手左サイドバックのアブドゥラ・アル・ハラシの左腕に当たってPKを奪取。これを上田が確実に決め切ったことで、日本は一気に優位に立った。
「でも僕の(浮き球の)パスがよかったら、普通にアシストをつけて大地がシュートを決めていたと思う。(カットされたボールを遠藤)航が拾って、2次攻撃ができて、そこからのハンドだったので…」と守田は反省の弁も口にする。遠藤や鎌田に助けられる形で前半を首尾よく折り返すことができたという。
迎えた後半。ここまでは左シャドーに固定気味だった鎌田が意図的に下がってくるようになり、スペースを空けて守田を前に上がらせるように仕向けた。
「大地はセンスだし、外の脇に下りてきたりした時が一番気持ちよくボールも回るし、それをやってくれればくれるほど2ボランチの一角が上がる。2点目は特に大地が引き出した瞬間に『もう点決まったな』と思うくらいで、僕はよかったなと思います」と守田も満面の笑みをのぞかせた。
ここでほぼ勝敗が決定的になった試合。バーレーンも守備が崩れ、守田は”水を得た魚”のように躍動する。61分には上田とのワンツーから左の大外を回ってゴール前に侵入。巧みに右足を振り抜いて3点目を挙げると、この3分後には三笘薫の折り返しに鋭く反応。相手最終ラインの背後に長い距離を走って右足を合わせ、4点目を叩き出した。
結局、日本は5-0で勝利したが、守田はこの9月2連戦でほぼフル稼働し、中国戦ではキャプテンマークもつけ、さらに今回2点を叩き出した。2試合ともPlayer of the Matchには選ばれなかったが、それに相応しい存在感とインパクトを残したのは間違いない。
「キャプテンマークを巻くこと自体は初めてじゃなかったし、そういう意識を持って日頃からやっています。
とはいえ、2試合の間には、3-4-2-1布陣の中盤のバランス取り方、立ち位置の最適解を見出すために、彼なりに悩んでいる姿も見受けられた。一つひとつの物事を深く捉え、考えるあまり、自分自身を苦しめてしまうところがあるのが守田の良さでも課題でもある。それは今年初めのAFCアジアカップカタール2023でも散見された点だ。
ただ、今回から元日本代表キャプテンの長谷部誠コーチが帯同。練習場でもしばしば話し込む姿があり、迷いを吐き出せる場ができた。それも中国、バーレーン戦の好調ぶりに寄与しているのかもしれない。
「ハセさんが入ってきて、『ミーティングってこうやってやるんだね』とか、『こういう練習のメニューなんだね』と知ったみたいで、そこから『こうした方がいいんじゃないか』というセッションが生まれると思うので。チャンピオンズリーグでの体験話とかもしてくれますし」と彼自身、少なからず助かっている様子だ。
長谷部コーチがワールドカップ3大会で絶対的存在感を示したように、守田も2年後のワールドカップではより重要な役割を担う必要がある。時にはキャプテンの遠藤航に真っ向から注文を出し、周りを鼓舞するようなことがあってもいい。
10月には前半の山場と位置づけられるサウジアラビアとのアウェー、オーストラリアとのホームの2連戦が控えている。遠藤も「相手も死に物狂いで来る」と警戒心を募らせる。そこで再び守田が鋭い戦術眼とセンスが発揮し、日本を勝たせてくれればベスト。ここからも中盤で確実にタクトを振るってほしい。
取材・文=元川悦子
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