7日の古巣復帰会見でこう力を込めた原口元気。33歳のベテランになった男は新たな気持ちで背番号「78」を背負い、14日のガンバ大阪戦で3773日ぶりのJリーグ出場を果たした。
登場したのは76分。プレー時間は15分余りと短かったが、「締めることだけを意識していた」と浦和の2カ月ぶりの白星のためにクローザーに徹したことを明かした。
「でも僕はクローズするためにレッズに来たわけじゃない。コンディション的にまだ90分行ける状態ではなかったし、最低限の仕事をしたかった。1つの役目だと考えてプレーしました。自分の状態は7~8割まで上がってきているし、そろそろ(頭からも)行けると思う」と、本人は17日の練習後にスタメン入りを熱望。早ければ21日のFC東京戦でボランチの一角に入る可能性も出てきたと言っていい。
今の原口はとにかく試合に飢えている。それはG大阪戦前日の移動の新幹線で隣になったという西川周作も痛感したことだ。
「元気は『早く試合やりたい』と鼻息が荒くて、『大阪着いてそのまま試合でいい』くらいのこともずっと言い続けていましたね」と10年ぶりに共闘することになったベテラン守護神も笑っていた。
それもそのはず。原口は1年半過ごしたシュトゥットガルトでリーグ戦13試合にしか出ることができなかったのである。
2023年2月にウニオン・ベルリンから赴いた当初は、ブルーノ・ラッバディア監督から“残留請負人”と大きな期待を寄せられ、遠藤航、伊藤洋輝とともにコンスタントに試合に出ていた。しかし、2カ月後に指揮官がセバスティアン・ヘーネス監督に代わった途端、序列が急降下。昨シーズンも控えから抜け出せずに時間だけが過ぎていった。シュトゥットガルトがリーグ2位という大躍進を遂げる中、本人は屈辱感と不完全燃焼感にあえいでいたに違いない。
その悔しさをヨーロッパで晴らせればベストだったが、「体が動けるうちに浦和に恩返しをしたい」という思いもあって、復帰という決断を下した。だからこそ、この先はスタメンでピッチに立ち続け、終盤戦のキーマンになる必要がある。
今のところ、ポジションは彼自身が希望するトップ下ではなく、ボランチがメイン。それでも「ボランチでも攻撃的なプレーはできる」と原口は自信をのぞかせる。
「今のメンバーを見ると、トップ下は(渡邊)凌磨も(中島)翔哉もいるし、(小泉)佳穂いる。
原口がそう前向きに語るのも、シュトゥットガルト時代の遠藤航との共闘経験が大きいのではないだろうか。2022-23シーズンの遠藤はボランチやインサイドハーフでプレーしつつも、ゴール前まで上がってフィニッシュに絡むシーンがかなり多かった。それだけの自由度を与えられていたからこそ、5ゴールという結果を残せた。
現日本代表キャプテンの一挙手一投足を同僚として目の当たりにした当時の原口は大いなる刺激を受けていた。が、3列目からの推進力やダイナミックさという部分はむしろ彼の方が上。屈強な相手に10年かけて磨いた守備強度を押し出し、ボールを奪って一気に前へと出ていければ、敵にとって脅威以外の何物でもないのだ。
「航はボランチから点を取れるというのを示していた。僕はタイプが違うから、あの役割をやれと言われても難しいけど、自分の絡み方があるし、他にできるプレーがあるのも理解している。出場時間が長くなれば、近いうちにそういうのも見せられると思います」と彼は目をギラつかせた。
興梠慎三も「僕からしたら相変わらずクソガキ(笑)。
今の浦和は年下のプレーヤーが大半を占めるため、周りに声をかけたり、アドバイスをしたりといった行動も起こさなければいけない。実際、そういった立ち振る舞いも練習から目についた。が、やはり原口元気は“ヤンチャ”でなければ面白くない。1トップからサイドバックまで幅広く使われたドイツでの10年間を糧にして、”中盤から勝負を決められる男”になってほしい。
次戦はホーム、埼玉スタジアム2002での凱旋試合。勝手知ったる場所で満員の大観衆を魅了する背番号78をぜひとも見たい。
取材・文=元川悦子