レアル・ソシエダで背番号「10」を背負う男の実力は、リーガ・エスパニョーラでプレーする若手の中でも群を抜いていると言っていい。ミケル・オヤルサバル、22歳。
この天才的なプレーヤーは、今季のラ・リーガで32試合に出場し、12ゴール4アシストとセンセーショナルな活躍を披露している。

名前:ミケル・オヤルサバル(Mikel Oyarzabal)
誕生日:1997年4月21日
年齢:22歳
身長/体重:181cm/78kg
主なポジション:左ウイング
リーグ成績:32試合出場12ゴール4アシスト

■18歳でトップチームデビュー&初ゴールを記録

 バスク州ギプスコア県エイバル出身のオヤルサバルは、2011年にレアル・ソシエダの下部組織に加わる。当時から利き足である左足の技術は相当高く、3年後の2014年11月15日にはプロデビューを果たす。リザーブチーム所属ながらセグンダ・ディビシオンBの試合に出場するという異例の“出世”だった。

 オヤルサバルの快進撃は続く。2015年10月25日には、18歳にしてプリメーラ・ディビシオンでのデビューを経験。
レバンテ戦の85分にカルロス・ベラとの交代でピッチに登場した。その後も少しずつ出場時間を増やしていくと、翌年2月8日のエスパニョール戦でトップチーム初ゴールを記録する。長年トップチームでプレーしてきた選手たちと遜色ないプレーを見せるオヤルサバルは、この頃からスタープレーヤーになる雰囲気を存分に漂わせていた。

■「今どのようにプレーすべきか」判断できる洞察力が魅力

 2018年夏にはレアル・ソシエダとの契約を2024年まで延長したオヤルサバル。クラブの象徴とも言える選手だったシャビ・プリエトから背番号「10」を受け継いだことからも、期待の大きさがうかがえる。

 そんなオヤルサバルの長所としては、精度の高い左足のキック、瞬間的な加速力、ドリブル時のボールコントロールの巧みさなどを挙げることができる。
だが、彼の真の価値は、まだ22歳と若いにもかかわらず、自分が今どのようなプレーを求められているのかを的確に捉えられる点だろう。左サイドで攻撃の起点となったり、中央に切れ込んでサイドバックがオーバーラップするスペースを空けたり、相手最終ラインの裏に抜け出したり、ポジションを下げて中盤に厚みをもたらしたりと、チームにとって最も必要なプレーを選択できる賢さがある。将来、ビッグクラブへとステップアップしたとしても、オヤルサバルの試合を読む洞察力は重宝されるはずだ。

■セリエやプレミアのクラブから関心…ライバルクラブとは移籍をめぐって“場外乱闘”も

 今季冬の移籍マーケット解禁前には、イタリアメディア『カルチョメルカート』がユヴェントスやインテルなどのセリエ勢に加えて、トッテナムもオヤルサバル獲得を検討していると報道。結局移籍は実現しなかったが、バスクの天才に対する関心の高さが浮き彫りとなった。

 さらに、レアル・ソシエダのライバルクラブであるアスレティック・ビルバオも、オヤルサバルにオファーを提示。
移籍が実現すれば「禁断の移籍」となっていたところだが、オヤルサバルは“ラ・レアル”(レアル・ソシエダの愛称)への忠誠を誓いチームに残留した。

 この移籍騒動の最中、思わぬ“場外乱闘”が勃発した。アスレティック・ビルバオ寄りの政治家イニャキ・アナサガスティがオヤルサバルを「傭兵」呼ばわりすると、レアル・ソシエダの本拠地であるサン・セバスティアン市の市長エネコ・ゴイアも「アナサガスティはバスクの選手たちが皆ビルバオでプレーしたいと思っているのか」と反論。奇しくもこのエピソードは、オヤルサバルの選手としての価値が非常に高まっていることを証明することとなった。

文=松本武水
写真=Getty Images