
学生時代にプロのキックボクサーとなり、卒業後は会社勤めを始めたものの、夢をあきらめきれず街頭に立ち、どつかれ屋をする……そんな夢を追う男がいた。
「もう20年も前の話です。芸術系の大学を卒業してグラフィックデザイナーとして就職したのですが薄給で激務の日々が続くなか、ある日テレビで『歌舞伎町の路上に立つ殴られ屋』を知ったんです。これは面白そうだと思って新宿にいって、その方に許可を得て、道頓堀の戎橋で『どつかれ屋』の副業をすることにしました。仲間3人でチームを組んで、1分1000円という料金です。おそらく1000人くらいから殴られたと思います」
そう語るのは、小嶌大介さん。どつかれ屋をしながらナンパをした女性と結婚。その後、3人の子宝に恵まれたが薄給は変わらないまま、どんどん激務に拍車がかかっていった。
「会社がブラックというよりは業界自体がブラックなんです。平日は4泊5日で泊まり込み、デスクの下に段ボールを敷いて寝ていました。そこまで大変な思いをして手取りで年400万円もいきません。こんな毎日からなんとか脱出したいと、より儲かる副業を模索しました」
体力を使う「どつかれ屋」は廃業して、「せどり」「FX」「アフィリエイト」に手を出すものの、なけなしの軍資金を溶かすばかり。そんな小嶌さんがたどり着いたのは不動産投資だった。
◆ゴミみたいな廃屋を再生
小嶌さんが不動産投資をはじめたのは2010年、34歳のとき。それまでの投資や副業で貯金をほぼ使い果たしたため、手持ち資金は50万円だけ。そこで父親から50万円、妻から50万円を土下座して借りて、計150万円でスタートした。