小中学校で目覚ましい学業成績を修めた児童を前にすれば、周囲の大人たちは「東大に行けるかも!?」と色めき立つもの。だが、自身も東大卒の池田渓氏は、著書『東大なんか入らなきゃよかった』の中で、世間が持つ“東大信仰”に一石を投じている。
「実は東大生の優秀さはピンキリです。大学の授業もテストもハイレベルで、毎年、学生の2割が留年しているほど。一方で、遊んでばかりいるのにテストでは高得点を取るような天才が横にいるんですから、努力や要領で東大に入った人にはキツい環境です。彼らは東大入学を後悔していることも少なくないし、卒業後もバラ色の人生を歩んでいるとは限りません」
高校での成績優秀者がやみくもに東大を目指すのは、必ずしも正解とは言えないようなのだ。
「東大でビリよりも、早稲田や慶應でトップのほうが就職などで幸せになれるかもしれません。それに特定の学術研究分野においては、東大よりも成果を上げている大学だってありますからね」
◆別大学の医学部に入り直す東大生も
そもそも当の東大生が、卒業後に他大学を受験するケースも一定数あるという話だから驚きだ。
「卒業後の進路が不本意だった場合、別大学の医学部に入り直す事例はよく見聞きします。医師免許を取れば一生食えますから、地方大学の医学部は、さながら東大生の人生再生工場といった状況です」
そうした立ち回りができなかった東大生に地道な取材を重ねたのが、池田氏の著書。うつ病になったメガバンク営業マン、月200時間の残業をこなす官僚、年収230万円の警備員など悲惨な東大OBが登場するが、いずれも世間が羨む東大生の姿とは言い難い。