
そんな観光客が激減した奈良公園で今、国の天然記念物として指定されている鹿の問題が深刻化されている。昨年9月には「観光客が減ったことで鹿せんべいを与えられなくなりガリガリになった」という誤情報が広まった奈良公園で話を聞いてみた。
◆気性が荒くなった鹿たち
「昨年は、春日大社で毎年行われる『赤ちゃん鹿の公開』から『若宮おん祭』など様々なイベントが中止になりましたね。慰安旅行や修学旅行のツアーバスも見かけなくなり、鹿せんべいの売上も8割減にまで落ち込みました。昨年、鹿が激痩せしたという噂が出回ったことがあったじゃないですか。激痩せの鹿はいなかったけど、外国人観光客が多かったときの鹿は鹿せんべいを食べすぎて太り過ぎていたんですよ。その頃に比べると今の鹿は少し痩せた印象を受けますね」
そう話すのは奈良公園付近で鹿せんべいなどを販売する売店の店員。確かに2018年に訪れたときに比べると、鹿は少し痩せたようにも見える。だが本来、鹿は草食動物。せんべいを食べなくても公園内の草や木の実を食べていれば問題ないのではないだろうか。
「公園内の草や木の実を食べ尽くしてしまったんです。冬で食料が少ないということもあり、鹿がお腹を空かせているというのは事実ですね。民家に入り込んで、庭に植えてある植物の木の実や果物を食べてしまうことが問題視されています。また、お腹を空かせているので以前よりも気性が荒くなっています。せんべいを買おうとした人の服を噛んだり、ツノで突いたり追いかけ回したり。それで皆、怖がってしまって鹿せんべいを購入する人も減ってきていますね」