さらに放送中の、timeleszの佐藤勝利さんとダブル主演を務めるパラレルラブストーリー『アポロの歌』(MBS/TBS)も佳境に入っている。
手塚治虫の原作コミックを実写化したドラマ『アポロの歌』は、手塚作品の中でも「人間の愛と業を見つめた」問題作。挑んだ髙石さんに、佐藤さんの印象や、もし「髙石さんが別世界に転生するなら?」と聞いてみた。
アニメではなく漫画の手塚作品に初めて触れた
――これまで手塚作品には。髙石あかり(以下、髙石):ちゃんと触れたことはなかったです。アニメの『鉄腕アトム』や『ブラックジャック』などは知っていますが、それもチラっと見たくらい。なので漫画としてイチからちゃんと読ませていただくのは今回が初めてでした。
――愛を軽蔑して生きていた昭吾(佐藤)が、あるきっかけで幼なじみのひろみ(高石)を失い、啓示を受けて異なる世界(パラレルワールド)を彷徨うことになります。そして第二世界、第三世界でもひろみとそっくりな相手に出会う。最初から難解な手塚作品に触れることになりました。
髙石:1ページ目から強烈なインパクトがあったので、どんな作品なんだろうと思いましたし、最初は複雑そうに感じて難しいのかなと思いました。
でも読んでいくうちに、昭吾の思う愛というものは、すごくいびつな形をしているんだけれど、ピュアで純粋なものにも感じられました。
今回私はさまざまな世界で違うキャラクターを演じましたが、そのひとりひとりの昭吾に対するピュアな思いは変わらずに演じたいなと思いました。
佐藤勝利は現場でいつも周囲にツッコミを入れていた

髙石:昭吾という人間がいないかぎり、私は愛を伝えることができません。いつも昭吾でいてくださった佐藤さんにとても感謝しています。
私は佐藤さんの昭吾としての目がすごく好きで。目の奥に昭吾としての影があるんです。そうした部分を感じられて、本当に助けていただきました。
――カメラの外での印象は?
髙石:とてもフレンドリーな方で、いろんな方とずっと笑いながらお話されていたイメージです。ツッコミが鋭くて、スタッフさんにも私にも、いつもツッコミを入れていた印象です(笑)。
合成人シグマ王として、とてつもない挑戦ができた

髙石:合成人のシグマ王には性別がありません。それも面白いなと思いました。でも見た目は人間ですし、言葉も普通の人間の言葉です。なので普通の人間と同じように演じることもできたのですが、シグマ王は読んでいて本当に不器用な人、というか合成人だと感じました。
――シグマ王は不器用。
髙石:その不器用さをどうやって表現したらいいだろうと。逆に器用ってなんだろうかとか。たとえば「愛してる」という言葉を投げかけるにも、吐息混じりに言うのか、両手を広げて大きな声で言うのか。
表現の仕方はたくさんあります。その全てを一辺倒にしたらどうだろうかと思いました。すると残るのは目なのか、カラダから発するエネルギーなのか。とにかく制限することで、芯にある“不器用さ”が出るかもしれない。そう考えて、声の発し方や表情などを決めていきました。
「私、こんな声を発せられるんだ!」という声でずっと通してやらせていただいたので、それも自分の中でとてつもない挑戦になりました。
まっすぐに気持ちを伝えるというのは、すごく不器用なこと

髙石:初めてシグマ王を見たときどういう反応になるのか、ちょっと不安ではありますが、その先を見て感じ取ってもらえたらと思います。
――さきほど制限を設けたというお話がありましたが、合成人であることが、より愛への渇望を伝えてくれそうです。
髙石:シグマ王は、誰よりもまっすぐだったなと思います。
それを器用だという人もいますが、駆け引きがありませんから。駆け引きができないから思いを全部伝えてしまう。それって相手は重く捉えるかもしれませんよね。昭吾も感じます。それでも伝えてしまう。不器用だなと思いました。
普通なら、ひと作品でひとつのやり方で役にアプローチしていきますが、今回はいくつものやり方や方法を試し試しやっていったので、やりがいしかない作品でした。
転生するなら、今とはまったく違う自分に

髙石:私の取り柄は、なぜかすさまじく周りに恵まれることなんです。そういう才能を持っていまして、どの現場に行っても本当にステキな方たちばかりと出会います。なので、もし生まれ変わることがあるなら、そういう……。
――(笑)。変えますか?
髙石:今は周りに恵まれすぎているので、逆に全く違う、真逆の世界に生まれるのもいいかもしれません。
――別世界に行くなら、あえて試練を。
髙石:そうですね。でもどうだろう(笑)。うーん。だけど、やっぱり今とは違う自分がいいかな。
今は食べることがすごく好きですけど、だから食べ過ぎちゃうところがあるし、お芝居が好きすぎるのですが、このお芝居というものがない世界なら、どんなものが見られるだろうとか。
目の魅力、オーラは、パーツにあるのではなく宿る
――客観的に意見を言わせていただくなら、髙石さんの相手を引き込んでしまう目は別世界でもぜひそのままで。髙石:顔は全く違うほうがいいです。
――そうなんですか?
髙石:たとえば目を褒めていただきましたが、目ヂカラだとしたら、パーツそのものとはまた違いますよね。それって宿るものなのかなと思います。
――なるほど。それなら見た目が違っても、きっと目のオーラはそのままですね。
髙石:それに自分とは全ったく違う人に魅力を感じるので、やっぱりまったく違う人になりたいです。
幸せは未来に望みがちだけれど、今感じるもの

髙石:日々、どれだけ幸せを見つけられるかといったことは、無意識にしているかもしれません。すごく小さな幸せでも。たとえば「わ、好きなお茶だ。嬉しい!」とか。
幸せって未来に望みがちですけど、今感じるものだと思いますし、たくさんある幸せを積んでいった先に未来があると思っています。
――感じた幸せは言葉として口にしますか? それとも心に思う。
髙石:結構口にも出すと思います。文字にも書きます。夢は夢ノートに書いてました。
夢ノートの一番上にあった朝ドラヒロインを叶えた
――この先は『ばけばけ』のヒロインに決まっていますが、そちらも夢ノートに書いていたんですよね。髙石:はい。朝ドラのオーディションは、寝る前にいつも妄想する夢レパートリーの一番最初にあるもので、ヒロインに受かって発表される瞬間をいっつも考えてました。それで寝られなくなるんですけど(笑)。
――実際に叶えたんですからすごいです。そちらもとても楽しみです。
髙石:そうですね、私も楽しみです。
――最後に改めて。クライマックスとなる『アポロの歌』を見ている人、追いかけて見てみようと思った人にメッセージをお願いします。
髙石:脚本が面白いので、まずそこは自信を持っておススメできます。それから出演者のお芝居だけではなく、監督をはじめ衣装やメイク、撮影や照明、美術と全員がこだわりにこだわった作品になっていますし、見ていただければきっと感じ取っていただけると思います。
ぜひ最後まで『アポロの歌』の世界に引き込まれていただけたら嬉しいです。
<取材・文・撮影/望月ふみ ヘアメイク/住本彩 スタイリスト/金田健志>
【望月ふみ】
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi