標識が立っていても運転中のドライバーが見落としやすいと言われている“信号機のない横断歩道”。日本自動車連盟(JAF)が行った『信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2025年調査結果)』によると、一時停止率は56.7%。
16年の同調査ではわずか7.6%だったため、この10年でかなり改善されているが、まだ4割弱の人がルールを無視していることになる。

信号機のない横断歩道で危険運転を目撃

「さっさとどけ!」“信号なし横断歩道”で運転手がブチギレ…歩...の画像はこちら >>
 ある休日の夕方、会社員の吉川洋輔さん(仮名・29歳)が自宅近くのコンビニへ徒歩で買い物に向かった時のことだ。店に行くには途中で横断歩道を渡らなければならないが、そこはいわゆる信号機が設置されていないタイプ。交通量は多くないとはいえ、渡る際は歩きスマホなどせず、左右をしっかり確認してから渡るようにしていたという。特にそのあたりの地域は交通マナーが悪い車が多かったようだ。

「私自身、マイカー通勤なんですけど、そこまで悪質でないとはいえ、後ろから煽られるのは日常茶飯事。それに明らかに制限速度を超えたスピードで運転するドライバーも多い。特にこの横断歩道がある道路は飛ばす人が多かったから、ほかの道よりも注意して歩いていました」

 そして、この横断歩道に近付いた時、1人の30代くらいの男性が道路を渡っていた。しかし、そのタイミングでやってきたのは1台のセダンタイプの乗用車。その車は何度もクラクションを鳴らしながら向かってきたそうだ。

「横断歩道の男性が急に飛び出したわけではなかったので、停まろうと思えばいくらでも止まれたはず。ブレーキ踏めば間に合う距離から鳴らしていましたから。『なんかヤバそうな車が来たぞ』と思いました」

車線の中央で立ち止まる歩行者男性

 しかし、ここで驚いたのは歩行者男性の行動。普通なら少し小走りで渡ったりするところだが、車線の中央で立ち止まったのだ。
車は男性の2~3メートル手前で停止したが、ここでもまたクラクションを鳴らしてくる。

 吉川さんがいた場所からは位置的に男性の表情は見えなかったが、クラクションの音に身体をビクッとさせたりすることもなく、ずっと車のほうを睨んでいるように感じたとか。

「この直後、車の運転手が窓を開け『バカヤロー!さっさとどけよ!』と怒鳴ったんです。私よりも少し年上っぽく見えましたけど、明るめの茶髪でガラも悪そうでしたね。もし私だったら自分が悪くなくてもビビッて謝っちゃったと思います」

歩行者男性が“まさかの行動”に

 だが、歩行者男性の口から出たのは、「横断歩道じゃ歩行者優先だろ!そんなこともわからねぇのか!」の一言。それも運転手に負けない怒声だったという。

「私は当事者ではなく、 ただ現場に居合わせた第三者っていうのもありましたけど、『怖がるどころかブチキレてるじゃん!』と不謹慎ながらちょっとワクワクしちゃいましたね。こんな場面、なかなかお目にかかれないじゃないですか」

 歩行者の男性は一喝した後、車の運転席側のドアのほうへ近づく。立ち止まったかと思ったら次の瞬間、いきなりドアに向かって蹴りを放ったのだ。

「大きな鈍い音が響いたので、なかなかの衝撃だったはずです。私が見る限り、蹴られた部分は明らかに凹んでいました」

被害者も手を出してしまえば加害者に

 この後、歩行者の男性は走って車の後ろに抜け、そのまま車道から歩道へ斜めに渡り、小さな路地へ入ってしまったとのこと。一方の運転手はすぐ路肩に停め、車から降りて蹴られた箇所をしばらく眺めていたという。

「百歩譲って怒鳴り返すだけならまだわかりますが、さすがに蹴っちゃダメですよね。
もちろん自業自得な部分はあるため、ドライバーに同情はまったくできないですけど……。今はほとんどの車にドライブレコーダーが設置されているので、決定的な証拠になっちゃうのによくやるなぁとは思いました。まぁ歩行者男性としても、あの状況ならドライバーは警察に訴えないと判断しての行動なのかもしれませんが」

 そもそも信号機がない横断歩道でも歩行者を確認した場合、一時停止を怠るのは、れっきとした道路交通法違反行為。また、車を蹴る行為も器物損壊罪に問われるおそれがある。

 道路交通法を守るのは、マナーではなく義務。歩行者側として今回と似たような状況に遭遇しても、その場の感情に任せて車を蹴る、あるいは運転手に直接危害を加えることは言語道断。低すぎる怒りの沸点は、取り返しのつかない事態を招きかねないことを肝に銘じておかなければならない。

<TEXT/トシタカマサ>

【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。
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