過去に若気の至りで“ヤンチャ”していた人でも、年齢を重ねるにつれて、だんだんと落ち着いて“丸く”なるもの。しかしながら、中年に差し掛かっても他人への迷惑行為を続ける“イキり中年ヤンキー”も相変わらず存在する。

 今から約10年前、ある繁華街のカプセルホテル内で中年ヤンキーのトラブルに巻き込まれたことがあるというコウさん(仮名・45歳・男性)が、その一部始終について語ってくれた。

「俺は組のもんだぞ!」ホテルで暴れる男が“宿泊客のチームプレ...の画像はこちら >>

真夜中、突然フロアに響く男の声の正体は…

 コウさんは当時、不動産関係企業で営業職をしており、仕事が終わるのが夜遅くになることも珍しくなかったそう。

「毎日激務だったのと、会社から自宅まで片道1時間かかるということもあり、帰るのが面倒な日は、会社近くにあったカプセルホテルによく泊まっていました」

 ある日、コウさんは夜11時すぎまで残業し、なじみのカプセルホテルに宿泊することにしたという。

「カプセルホテルをよく利用する身ではありましたが、その頃は転職したてで月給もそこまで高くなかったため、カプセルルームではなく大広間にある仮眠室を毎回利用して、なるべく安く済ませていました。

 そこのホテルは仮眠室とカプセルルームのエリアが繋がっている構造で、仮眠室の向かいに食堂や大浴場、サウナなどがありました」

 深夜1時頃、コウさんはいつものように大浴場でゆっくり過ごした後、仮眠室へ。

「少し仕事のメールを返してから、“そろそろ寝るか”と、目を閉じました。しかし、まだ眠りが浅いうちに、突然野太い男の声が響き渡り、目が覚めてしまったんです」

 その男は40代後半ほどで、パンチパーマのイカつい髪型、身長はコウさんとさほど変わらず中背。さらに派手な昇り竜柄のシャツをはだけさせ、見るからにガラが悪かったという。

「仮眠室から出て声のするほうを見てみると、その男は食堂に入り、『おーい、まだやってるか!腹減ったからなんか食わせろ』と大声で怒鳴り散らかしていました。すぐにホテルスタッフの人が駆けつけ、退店するよう促していましたが、『うるせえな!腹減ってんだ、こっちは!』と、なかなか諦めが悪い奴でした」

 真夜中だったこともあり食堂は営業終了していた。スタッフが「周りのお客様が寝ていますので、静かにしてください。ご退出願います」などと諭しても、その男は聞く耳を持たなかったという。

「俺は〇〇組のもんだぞ!」と凄む中年男

 コウさんは仕事のストレスが常日頃から溜まっており、そんななか束の間の休息を邪魔されたことに激しい怒りを覚えたそうだ。

「普段ならなんとか我慢してやり過ごそうとするタイプなんですけど、その日は“どうにかしてコイツを黙らせたい”と思ったんです。


 といっても、やはりいきなり喧嘩の流れになるのも怖かったので、最初はゆっくり近づき、『あのすみません、みなさん寝ているので静かにしてくれませんか』と声をかけました。ちなみにその中年男はかなり酒臭かったので、泥酔状態だったんでしょう」

 そうすると男はコウさんを鋭い眼光で睨みつけ、「あ?お前、いまなんつった?」と言い、コウさんを完全に“ロックオン”。

「おい、お前、俺が誰だか知ってんのか。〇〇組のもんだぞ!お前、誰じゃ!?」

 なんと自身をヤクザだと名乗り、両腕の和彫りの入れ墨を見せてきた中年男。コウさんは思わず後ずさりしたが、“ここで負けたくない”と思い、果敢にも言い返したという。

「僕は瞬発的に『え?あなたのことなんて知らないですけど?あなた自分が有名人だとでも思ってるんですか(笑)?』と煽るように言い返しちゃって。そのときの僕はアドレナリンが出まくっていたみたいで」

 その男はコウさんに言い返されると思っていなかったのか、どんどん怒りで顔が赤くなっていき、また大声で怒鳴り、埒が開かない状態に……。

警察が現れてテンパった中年ヤンキーが暴走

 食堂の出入り口付近では、他の宿泊者たちがコウさんに熱い視線を送りつつ、見守っていたという。

 男とホテルスタッフ、そしてコウさんが押し問答をしているうちに、40分ほどが経過した。すると突然パトカーのサイレンが外から聞こえてきたのだ。

「後から話を聞いたのですが、男が怒鳴り散らかしている間に、宿泊者のひとりが警察に通報してくれていたみたいです」

 体格のいい警察官2人が、その男の前に立ちはだかり、「あんた、こんな時間に何してるの」と問い詰めたという。

 警察の登場にテンパッたのか、男は最後の悪あがき。
食堂のテーブルにあった調味料類を片っ端から地面に投げ落としたのだ。

「これでも器物損壊にあたる行為になるらしく、警察はすぐに男を取り押さえ、パトカーに連行していきました。男が帰った後は、宿泊者の方たちから『よくやってくれました!』と言っていただき、謎の連帯感が生まれていましたね(笑)」

 後日コウさんが警察から事情を聞いたところ、その男は以前にも泥酔状態のまま深夜のカラオケ店で暴れ、警察沙汰になったことがあったという。余談だが暴力団関係者ではなかったことも判明した。

――酒は時に人の厄介な部分を引き出すこともある。しかし、中高年になってからも人に迷惑をかけるような“イタい飲み方”だけはしないようにしたいものだ。

<取材・文/瑠璃光丸凪(A4studio)>

【瑠璃光丸凪】
編集プロダクションA4studio(エーヨンスタジオ)所属のライター。興味のあるジャンルは、アングラ・音楽・ファッションなどサブカルチャー全般と、ジェンダー問題、政治経済問題について。趣味はレコード集め。
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