女王様であり、インフルエンサーとしても活動する環奈さん(@sakekasukanna)は、「SMに出会ってから、生きててよかったと思えた」と話す。身体を傷つけながら精神を癒やす生業にたどり着くまでの、道程に迫った。

「1500万円」を豊胸と整形に投じた女性の壮絶な半生。“完成...の画像はこちら >>

地元で経験した壮絶ないじめ

――“女王様”と聞くと、どうしても「痛いことをされるのではないか」と身構えてしまいます。

環奈:日常の人間関係では言いづらいゆがんだ性癖をさらけ出すために、女王様がいるのだと思っています。ムチで人を叩いたりすることが女王様の本質ではありません。もっと精神的に奥底にある「言えない願望」を叶える仕事だと考えているんです。

――カウンセリングをしっかり行うと聞きました。

環奈:そうですね。「本当にされたくないこと」「本当に言われたくないこと」を聞くようにしています。私と接する時間を楽しんでほしいし、不用意な言動で傷つけたくないと思っているからです。個人的には、人の痛みがわかる人間が女王様をやるべきだと思っていますし、そうありたいとも思っています。

――環奈さん自身、人間関係にはかなり苦しんだとか。

環奈:私は福岡県北九州市で育ったのですが、中学生になると、いじめに遭うようになりました。主に容姿に関することです。「ブス」「デブ」という言葉に傷つけられました。
顎がしゃくれ気味だったことから「イノキ」というあだ名で呼ばれたこともあります。また家庭でも問題を抱えていたことから、当時は「生きていたくない」と思うことがしばしばありました。

服で隠れる範囲を狙う…苛烈な母親の暴力

――どのようなご家庭で育ちましたか。

環奈:母と実父は、物心ついたときには離婚していました。だから私は実父がどんな人なのか、顔さえもわかりません。義理の父と再婚したのは、私が小1のときだったと思います。血こそ繋がっていませんが、現在でも帰省の際には自宅に泊めてもらうこともあるなど、交流があります。一方で、母とはもう連絡も取っていなくて……。

――何があったのか気になります。

環奈:もともと小学校低学年あたりから、怒ると手が出る人ではありました。ただ、中学生になると、その暴力の頻度がエスカレートしていったんです。義理の父にバレてはいけないと考えたのでしょう、顔などの見えるところは殴られませんでした。全部、洋服で隠れる範囲を狙っていました。
もちろん、怒られるときは母の気分です。また、ふと思い出したように、「あんたってブスだよねぇ」と私を見て言うこともありました。

 私は17歳になる前に家出をして、当時交際していた彼氏の家に半ば避難したんです。母は、義理の父ともそのときすでに離婚していました。母から逃れるためでもあり、母の当時の交際相手から逃れるためでもありました。私たちの家に転がり込んできたその彼氏は、私が入っているとわかっていながら風呂やトイレを覗くなどの行動を取るような人でした。

――具体的に、どんなトリガーで暴力を振るわれるのでしょうか。

環奈:ほんの一例ですが、義弟(義理の父親との子ども)が小学校で忘れ物をして、それを担任の先生に指摘されたとします。すると母はフラストレーションが溜まりますよね。それを、「お前の監督不行き届きだ」みたいな形で、私を殴ることで発散させるんです。ちなみに、私が家出をする前に母の彼氏からトイレを覗かれたりしても母に相談しなかったのは、このときの体験があるからです。「どうせ私が悪いことにされる」と思ってしまうんです。


豊胸と整形に投じた総額は「1500万円」

――理不尽ですね。お母様から、あるいは同級生から容姿が醜いと言われることが、現在の美貌を欲する原動力になった部分もありますか。

環奈:無関係ではないでしょうね。私はこれまで、美容整形や豊胸手術などに合計1500万円程度かけてきたと思います。顔だけでも500万円以上かかっているはずです。自分が思う“美しさ”を手に入れたいと思っていることは確かです。

――美容整形は何度もしたのでしょうか。

環奈:はい、おそらく大小合わせて20回くらいはメスを入れていると思います。たとえば鼻を変えたとしても、「流行の顔じゃないな」と思ったらまた手術をすることがあるので。“完成”みたいなものがないんですよね。

――バストは最初、Aカップだったとか。

環奈:それが本当にコンプレックスで。以前の在籍店の掲示板に「まな板」とか書かれることがあったんですよね。
最初、200ccのシリコンを入れてEカップになったのですが、胸が不自然なほど硬くなってしまって。いろいろ調べたら、脂肪をまったく入れずにシリコンを入れるとそうなりやすいことがわかったんです。そこでシリコンを抜いて、全身の脂肪吸引をしてから脂肪を胸に注入することにしました。SNSで人気キャバ嬢のタイムラインをみて、カリカリの身体に大きな胸がついているのが羨ましくて、その後、「可能なかぎりシリコンも入れてください」と医師に頼んでHカップになったんです。

――でも満足はできなかった。

環奈:確かに大きいんですけど、横から見たときの迫力がいまいちに感じてしまって。さらに調べてみると、シリコンの種類を変えると理想に近づくことがわかりました。それで、Iカップになったという経緯です。

実父の借金が雪だるま式に膨らみ…

――ところで、実のお父様とは連絡をまったく取っていないのでしょうか。

環奈:5年ほど前に、自死したようです。それは別の県警からの連絡で知りました。「遺体を引き取りに来てほしい」と言われたのですが、断りました。これまでの人生で会うことがなかったし、会いたいと思えなかったので。


――なぜ自死を。

環奈:警察が言うには、当時交際していた女性と別れたばかりだったようです。公園で首を吊っていたと言われました。その後、実父がサラ金から金を借りていたこともわかりました。かなり長期にわたる滞納で、元本が10万円くらいなのに、私のところに来た請求額が200万円を超えていて驚きました。もちろん、相続放棄をしたので支払っていませんが。

――実のお父様はご親戚とも縁が薄かったのでしょうか。

環奈:戸籍上は、複数のきょうだいがいることが確認できているのですが、きっと誰も身元引受人になってくれなかったのではないかと思います。実父の母(祖母)が認知症になったときも、実父が生きていたにもかかわらず、彼を飛び越えて私に司法書士から連絡がきたほどです。祖母についても実父同様わからないので、断りましたが。

「生きていてよかった」と思えた客の存在

――いま、女王様として環奈さんが感じることがあれば教えてください。

環奈:これまでの人生は正直、「生きていても仕方がない」と思うことの連続でした。
しかし、SMに出会って、お客さんのいろんな苦悩を聞いていくうちに、さまざまな苦しみと対峙している人たちがいることがわかりました。求めてくれる人がいることを本当に嬉しく感じるし、生きていてよかったと思えるようになりました。

お前は醜い――母親や同級生の心ない言葉が、顔や身体を幾度も切り刻んでまで美に執着するに至らせたともいえる。だが環奈さんは、外見を磨くだけで歩みを止めなかった。女王様としての技術を高め、傾聴を怠らなかったからこそ、客から絶大な信頼を得ることができた。見た目の美しさではなく、内面の謙虚さによって、人生を開花させた。

<取材・文/黒島暁生>

「1500万円」を豊胸と整形に投じた女性の壮絶な半生。“完成のない”美しさを手に入れたいワケとは
環奈


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環奈


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環奈


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【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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