新幹線の座席を倒して、移動中にゆっくり過ごしたい人は多いだろう。しかし、後ろの乗客への配慮がない倒し方をされると、窮屈な思いをすることがある。

 今回は、新幹線で前の乗客に座席を大きく倒され困惑したものの、その後の思わぬ展開にスカッとしたという2人のエピソードを紹介する。

ひと言もなく座席を倒した男性

新幹線の座席を「ものすごい勢いで」倒してきた高齢男性…注意も...の画像はこちら >>
 ある日、新幹線で移動していた相沢真由さん(仮名・40代)は、途中駅から乗ってきた60代くらいの男性の行動に困惑したという。男性は、相沢さんの前の座席に座った。

「座ってすぐに一度腰を浮かせて、後ろにいた私の顔を見たんです。そのあと、何も言わずに座席をものすごい勢いで倒してきました」

 相沢さんのほうを確認したため、声をかけてくれるのかと思ったそうだ。

「かなり倒してきたので、こちらのスペースは狭くなりました。『もう少し、戻してもらえませんか?』と言いたかったですけど、私は小心者なので……」

 相手に声をかけ、逆ギレされたらたまらない。できるだけ関わりたくないという気持ちがあった。

 そんな相沢さんをよそに、男性はほどなくして“グウグウ”と眠り始めた。結局、何も言えないまま目的地に到着。男性より先に新幹線を降りたという。

自分が座っていた席に座ったのは「大柄な外国人」

 ホームに降りても、相沢さんのモヤモヤは晴れなかった。

「ちょっと恨みがましいですけど、窓越しに睨んでやろうと思って、さっきまで自分が座っていたあたりを見ました」

 すると、思いがけない光景が目に入った。先ほどの席に、体格の大きな外国人男性が座ろうとしていたのだ。


「目の前に大柄な外国人男性がいたので、ものすごく驚いていましたね。その男性が『座席を戻してほしい』と身振り手振りで伝えると、前の男性は目を泳がせながら、ぎこちなく座席を戻していました」

 後ろの相沢さんを気にせず、座席を大きく倒して眠っていた男性。その変わりようを見て、思わず言葉が漏れた。

「背もたれをまっすぐにして、今度は居心地が悪そうに座っていました。その姿がなんとも情けなくて、『だっさ』って呟いてしまいました。少しスカッとしましたね」

弁当を広げた瞬間、前の座席が倒されて…

 ひとり旅で人気観光地を巡っていた小野田直樹さん(仮名・30代)は、旅行初日に新幹線で移動していた。天気にも恵まれ、気分よく旅をスタートさせたという。

「目的地までは少し距離があったので、車内で弁当を食べながらゆっくり過ごすつもりでした」

 座席につき、弁当を取り出して食べる準備をし始めた、そのときだった。

「突然、『ガタン!』と目の前の座席が倒れてきたんです。ちょうど弁当をテーブルに出そうとしていたところだったのですが、かなり倒してきたので、これでは弁当を置くスペースがないなと思いました」

 困った小野田さんは、前の乗客に「すみません。座席を倒すときは一声かけてもらえませんか?」と声をかけた。

 ところが、相手は振り返ることもなく、スマートフォンを操作していたそうだ。

 せっかくの旅行初日。
ここで揉めるのもイヤだったため、それ以上は何も言わず我慢することにした。

席に戻る前、まさかの光景が…

 しばらくして、小野田さんはトイレに行くため席を立った。その際、前の乗客が座席の背面テーブルに弁当を置いているのが目に入った。

「この人もこれから食べるんだなと思いながら、トイレに行きました。そして席に戻る前、ちょうど前の乗客が弁当のふたを開け、食べ始めようとしていたのですが、なんと今度はその人の前の座席が『ガタン!』と倒れたんです」

 背面テーブルに置かれていた弁当が傾き、床へ落下。中身が散らばってしまった。

「前の人は固まっていました。床に落ちた弁当を見ながら、悔しいような悲しいような、なんとも言えない顔をしていました」

 その姿を見た小野田さんの頭には、先ほど自分がされたことが浮かんだ。

 弁当を落としたこと自体は気の毒だったが、ひと言もなく座席を倒したうえ、声をかけても無視された直後。小野田さんは「正直、少しスカッとしましたね。さっきまでのモヤモヤもなくなりました」と話した。

 思わぬ出来事で気持ちを切り替えられた小野田さん。
その後は予定どおり、ひとり旅を楽しんだそうだ。

 座席を倒すこと自体は、乗客に認められた行為。しかし、その背後には別の人の空間がある。トラブルを避け、誰もが気持ちよく移動するためにも、背もたれを倒す前に後方を確認すること。そんな小さな心遣いを忘れないようにしたい。

<取材・文/chimi86>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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