各担当記者が推す選手を紹介する「推しえて」第8回は、楽天・鈴木翔天投手(28)。23年から勝利の方程式の一角を務めてきたサウスポーが、今季は試合を締める役割も担いながら救援陣の中心として活躍。

11日に「上半身のコンディション不良」で抹消されたが、かつてチームの不動の守護神だったパドレス・松井裕樹投手(29)からの“金言”を胸に前に進む。(取材・構成=有吉 広紀)

 昨季まで2年連続40試合以上登板&20ホールド以上をマーク。昨季は防御率も1・66とブルペンを支えた。鈴木翔はセットアッパー左腕として地位を築いた。今季は開幕のオリックス戦(京セラD)で同点の9回に登板。いきなりサヨナラ負けで1敗目を喫したが、自身3登板目から17試合連続無失点などチームを支えてきた。

 「自分の役割をちゃんとできていたし、やってはダメなことと、やっていいことをしっかり割り切って投げることができている」

 昨季までの通算セーブ数は2。だが今季は4月15日のソフトバンク戦をはじめ、ここまで4セーブをマーク。試合を締める重要な場面では、23年までともにプレーしパドレスに移籍した松井からの助言が生きた。

 「9回になったらやってはいけないことが増えますけど、同じ1イニングという部分ではあまり変わらないかな。松井さんからもよく『7回も8回も9回も変わらないよ』と、ずっと言われていて。自分でも変わらないんだと言い聞かせてマウンドに上がっています」

 1学年上の松井とは今も連絡を取る間柄だ。

プロの世界で結果を残していた先輩左腕から、学ぶことや感じることは多かった。

 「やっぱり右と左って、同じ投手ですけど感覚とか考え方とか、ちょっと違うんです。左投手から聞く方が僕はスムーズに入ってくる気がするので、よく見たり、聞いたりしていました」

 毎日のようにブルペンで肩を作り、マウンドに上がる中継ぎ投手。日々のコンディショニングも重要になってくるが、ここでも松井の考えを実践している。11日に抹消され、悔しさはあるが教えは心に残っている。

 「体の状態を、10が最高だとしたら6を下回らないように。6から8の状態をずっとキープできるようにケアをしています。松井さんも『10でシーズンを戦い抜くことは無理だから6を切らないようなやり方をするといいよ』と言っていたので意識しています」

 プロ7年目。先発経験はない。救援ならではのやりがいを感じている。

 「やっぱり僅差の試合を拾う、勝ちに持っていくことが中継ぎの面白さだと思う。そういう試合を1試合でも多く、みんなで拾えるように心がけています。

先発の人たちに長く投げてもらうに越したことはないんですけど、先発のピンチを救ったり、終盤の独特な雰囲気で投げられるのもやりがいですね」

 投手陣全体の雰囲気の良さを感じる一幕がある。試合前の練習中、当日の先発投手は早めにベンチへ戻るのだが、その際、他の投手陣が拍手をして送り出す。

 「数年前からやっていることですね。冗談で、完封!とか言っていますけど(笑)。そんな簡単にできることじゃないのはみんな分かっているので。中継ぎ陣は送り出すことしかできないので、思いを込めてやっています」

 長いシーズンを戦い抜くなかで、気持ちの切り替えも大事なこと。先輩が整う場所に“連行”してくれる。

 「ボーッとしたら野球のことを考えてしまうので、漫画とかサウナとか、没頭して忘れられることをしています。サウナは、遠征に行くと(渡辺)佳明さんが新規開拓してくれて。連行されるって書いておいてください(笑)。体も疲れますけど、やっぱり心が疲れるので、そういう時はサウナがいいですね」

 Bクラスからの逆襲へ左腕の力が再び必要になる時は来る。そして、いつかは松井のように、不動の守護神になれるように努力を重ねる。

 「もちろん松井さんのように、9回を投げ続けられるような選手を目指してやっています。毎日きついですけど、抑えた時の歓声や拍手にはすごく力をもらえます。それを聞くために頑張っているところもあるので、僕が抑えた後は少し多めにしてもらえたらなって思ってます(笑)」

 ◆鈴木 翔天(すずき・そら)1996年8月19日、神奈川県出身。28歳。向上では3年夏に神奈川大会準優勝。富士大では3年秋のリーグ戦・八戸工大戦で完全試合達成。2018年ドラフト8位で楽天に入団。24年プレミア12日本代表。185センチ、82キロ。左投左打。今季年俸6500万円(金額は推定)。

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