小さな体でひたむきに頑張る姿に、アイドル的な人気を誇ったメロディーレーン。G1でも善戦した現役時代のエピソードについて岡田スタッド・岡田牧雄代表に取材した。

 産まれた瞬間はあまりの小ささに暗い雰囲気が立ちこめたという。父はオルフェーヴル、母メーヴェもオープン特別まで勝った馬。「(母メーヴェは)すごく期待している牝馬で。期待しているお母さんに子供ができたという喜びがあったのに、本当に…出てきた子供は…。『えぇっ双子か!?』『双子だからもう1頭いるだろ?』って、そう言うぐらい。本当に小さかったの」と、岡田氏は当時を回想する。

 競走馬になれないのでは…という岡田氏やスタッフの心配をよそに、「育てていくなかで『小さいけど体幹はすごいな、この馬』っていう。暴れ方もすごいし」「えりもの24時間昼夜放牧なんかでも、全然へこたれることもない」。「乗りだした頃なんて300kgあるかないかぐらい」という小さな体ながら、動きの良さは目を見張るものがあった。

 こうして競走馬デビューしたメロディーレーンは19年9月にJRA最少馬体重勝利記録(338キロ)を更新。2勝目を挙げた後、「森田(直行)調教師さんから『菊花賞で使わせてくれ』という話がきた」。思いもよらない提案に驚いた岡田氏は「ちょっと悪い言い方をしちゃったよね。

『くだらんこと言うなよ』って。『冗談だろ』ぐらいの感覚で」。長距離、3000mに対しての適性はナンバーワンだと思っていたが、「男馬相手に330kgの馬を3000m使うというのが…」とためらう岡田氏。しかし、森田調教師は「どうしても使いたい」と粘ったという。

 その結果、菊花賞では牡馬相手に5着と健闘。岡田氏の度肝を抜いた。「もう本当に驚いた。すごい脚だったしね」「(森田調教師に)『思いもよらないこと過ぎたから、嫌な言い方して申し訳なかった』って謝ったよね」。その後も、芝の長距離戦を中心に8歳まで現役を続けた。

 岡田氏は、メロディーレーンに教えられたことがあるという。「自分が馬を見る目とか、自分が馬を評価する時にそれを絶対と思っちゃいけないって本当に思い知らされた。生命あるものが生きている以上は、可能性っていうのは無限なんだろうなという」。

4勝を挙げたメロディーレーンの現役時代。「だってもう0%に近いぐらい、無理だと思っていたから。だから『諦めちゃいけない』とか、人が生きるうえで大事なことを教わったよね。だからメロディーレーンには感謝しかない」。

 メロディーレーンは岡田スタッドで新たな生活をスタートさせている。現在はベンバトルの子を受胎中。母になるという目標へ向かっている。

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