◆第107回全国高校野球選手権埼玉大会 ▽4回戦 昌平5x-1花咲徳栄=延長10回タイブレーク=(19日・越谷市民)

 昨夏決勝の再戦となった強豪同士の注目カードは、延長10回タイブレークの末、昌平に軍配が上がった。1死満塁から3番の諏江武尊二塁手(3年)が左越えにグランドスラムのサヨナラ勝利。

背番号11の最速148キロ右腕・窪田竣介投手(3年)が延長10回を8安打1失点完投勝ち。1つ1つアウトを積み重ねるたび、雄たけびを挙げて絶叫。チームに勢いをもたらした。

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 投げ抜いた。心は折れなかった。強打の花咲徳栄打線を相手に163球を投じた剛腕に、勝利という名のプレゼントが届いた。アウトを取るたび、体を反って、叫んだ。雄姿は、阪急の守護神として活躍したアニマル・レスリーを彷彿とさせた。

 「自然とチームを鼓舞する気持ちでした」

 試合中、岩崎優一監督にこう言われた。

 「そんなにガッツポーズすると、エンジンが切れるぞ!」

 だが最後までマウンドを守り通した。指揮官は「心配していたんですが、モードに入っていましたね…感謝です」と最敬礼した。

 大会前のことだ。

「いろいろ迷惑をかけて…。監督がゴハンに連れて行ってくれたんです」。サイゼリヤの一角。岩崎監督の一言に、心が熱くなった。

 「夏は、お前だぞ」

 窪田は振り返る。

 「やる気も出ましたし、すごくうれしかった。期待に応えようと思いました」

 汗でぬれた帽子のツバには「家族のため」と書かれていた。込められた思いとは?

 「両親はもちろん、チームメートも家族。去年の先輩たちも、家族です。OBの方々に、喜んでもらえたかな」

 人の笑顔のためと思うと、不思議な力が湧く。頑張れる。「三度目の正直」となる白星は、そんな熱き心で奪い取った。

(加藤 弘士)

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