2012年ロンドン五輪レスリング女子48キロ級で金メダルを獲得した小原日登美(おばら・ひとみ、旧姓・坂本)さんが18日に死去したことが19日、分かった。44歳。

葬儀・告別式は未定。死因は明らかにされておらず、所属する自衛隊体育学校の広報は、スポーツ報知の取材に「ご遺族の心情等への配慮や亡くなられた隊員およびご遺族のプライバシーを保護する必要があるため、回答は差し控えさせていただきます」とコメントした。レスリング協会関係者もこの日、訃報(ふほう)を知らされたという。

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 「壮絶」。現役時代の小原さんを一言で表現するならこの2文字だろう。2度の引退から復帰、足かけ10年に及ぶ挑戦の末、初出場したロンドン五輪で金メダルに輝いた執念の人だった。うつ病、過食症、肉をそぐような減量苦…。失いかけては取り戻してきた競技人生を象徴するように、決勝戦は0―4の大量失点からの大逆転勝ちだった。自分に打ち勝った象徴の金メダル。勝った瞬間の小原さんの魂の絶叫が忘れられない。

 試合後、メダル授与式が終わり、まだ熱闘の余韻が残る記者会見場でのこと。小原さんの人柄の良さに甘えて、「メダル、触っていいっスかっ!?」。

人懐っこい八戸弁なまりで「いいですよ。首にかけますか?」と返ってきた。「多くを犠牲にしたメダルでしたし、一人でも多くの人に喜んでもらいたいから」と惜しげもなく首に金メダルをかけてくれた。そういう人だった。

 「いつでもどっからでも、遅いってことないって」。父・清美さんが苦しんでいた頃の小原さんに贈った言葉を思い出す。多くを教えてくれたアスリートだった。(12年ロンドン五輪担当・小河原 俊哉)

 ◆小原 日登美(おばら・ひとみ) 旧姓・坂本。1981年1月4日、青森・八戸市生まれ。八戸工大一高、中京女大(現至学館大)卒業後、2005年に自衛隊入隊。世界選手権は非五輪階級の51キロ級で6度(00、01、05~08年)制し、10、11年に五輪階級の48キロ級で連覇。12年ロンドン五輪で同級金メダルを獲得し、同五輪後に引退。

10年に元レスリング選手の小原康司氏と結婚し、14年に第1子、16年に第2子を出産。身長155センチ。

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