12人の世界のトップジョッキーによって競われるチーム対抗戦「ドバイデューティフリー シャーガーカップ」が9日、英国・アスコット競馬場で行われる。「アジア選抜」に選ばれた坂井瑠星騎手(28)=栗東・矢作厩舎=は初出場で、日本人初の個人優勝を狙う。
伝統への憧れが、胸を熱くさせる。坂井はデビュー10年目でシャーガーCに初選出。アスコット競馬場での騎乗も初めてだ。「世界中で、今一番乗りたい競馬場」。既に9か国の海外レースに挑んでいるが、特別な思いのある地だ。
きっかけは6年前だ。負傷での休養中に、シュヴァルグランが遠征したキングジョージ6世&クイーンエリザベスSを現地で観戦。優勝したエネイブルなど名馬の迫力にも圧倒された。「すごく雰囲気が良くて。イギリス競馬は格式が高い」。当時撮った写真は、今も携帯の待ち受けになっている。
これまで英国ではグッドウッド競馬場、ニューマーケット競馬場で騎乗。
日本馬の遠征に帯同するのではなく、自身の腕が評価されての選出。「ジョッキーとして呼ばれて行けるのはうれしく思う」と笑みを見せる。「一個でも勝って、見せ場をつくれたらいい。個人優勝を目指したい」。やはり初挑戦となる岩田望来騎手(25)=栗東・フリー=とともに日本の若手スターが、近代競馬発祥の地で手綱さばきを見せつける。(水納 愛美)
◆アスコット競馬場 イギリス王室が所有する競馬場で、1702年に即位したアン女王がこの地で競馬を始めた。6月中旬に連続5日間で行われる「ロイヤルアスコット開催」は、例年計30万人ほどの観客が集まる一大スポーツイベント。
◆シャーガーC 99年に創設されたチーム制の対抗競走。00年からアスコット競馬場で行われ、6競走のポイントの合計で優勝チームを決める。今年は女性選抜に代わり、アジア選抜が加わった。個人別1位にはシルバーサドル賞が贈られ、マイケル・キネーン、ライアン・ムーアら世界的名手が受賞している。日本人は最多8度出場の武豊をはじめ14人が出場。勝利を挙げたのは武豊(07年1勝、08年2勝、11年1勝)と横山和(23年1勝)の2人。武豊は08年に個人2位に輝いている。