◆サッカー全日本高校女子選手権静岡県大会  ▽決勝 常葉大橘1―0藤枝順心(1日、草薙陸上競技場)

 常葉大橘が藤枝順心に1―0で競り勝って連覇を飾った。夏の県総体に続く2冠を達成。

今秋からスペイン女子2部・エウロパに入団するMF小島あのん(3年)が後半30分、決勝の直接FKを放り込んだ。守備も最後まで緩みなく、全国4連覇を目指す最強のライバルに得点を許さなかった。両校は12月29日に兵庫県内で開幕する全国大会に出場する。

 全ての思いをボールに込めた。後半30分、ゴール正面約25メートルの位置で獲得したFK。常葉大橘・小島は味方のフェイントから間髪入れず右足を振った。弧を描いた弾道は6枚の壁を越え、GKが伸ばした手をかすめてネットに吸い込まれた。「普段狙わないファーだったけど、いい所に当たった」。毎日自主練習してきた武器で宿敵を沈めた。準決勝から2戦連発のヒロインは「昨日からゴールのイメージはしてました。めっちゃうれしい」と笑顔をはじけさせた。

 じれなかった。

序盤から圧倒的にボールを持たれたが、連動した守備で対抗した。小島の一撃がチーム最初のシュートで、総数は2―10。それでも落合史裕監督(35)が「この展開の方が集中は途切れない」と話した通り、焦りはなかった。8日の皇后杯を残すが、11日に離日する小島にとって今試合が最後の選手権。DF望月寧々主将(3年)が「気持ちよく送り出したい」と語った通り、「あのんのため」は全員の胸に刻まれていた。

 小島は今夏の全国総体後、スペインで練習参加。内定を勝ち取った。「小6で初めてスペインに行ってから、いつかここでやりたいと思っていた。日本を離れるのは寂しいけど、楽しみ」。新天地で持ち味の運動量に磨きをかけ、なでしこジャパン入りを目指す。

 チームは頼れるボランチ抜きで全国に挑むことになる。県1位で臨んだ昨年度は初戦の2回戦で敗退し、今夏の全国総体も決勝で敗れ準優勝に終わった。

「誰が出ても強い橘にしていきたい。しっかり準備します」と望月主将。旅立つ背番号8の思いも背負い、夏の忘れ物を取りに行く。(武藤 瑞基)

 ◆小島 あのん(こじま・あのん)2007年8月23日、沼津市生まれ。18歳。小学1年時にドリームSSSでサッカーを始め、常葉大橘中を経て同高に進学。憧れの選手はスペイン代表MFペドリ。158センチ、53キロ。右利き。家族は両親と兄2人。

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