フィギュアスケート グランプリシリーズ第4戦 NHK杯 最終日(8日、大阪・東和薬品ラクタブドーム)

 各種目のフリーが行われ、女子は今季限りで引退するエース・坂本花織(25)=シスメックス=が150・13点、合計227・18点で、ともに今季世界最高点をマークして2連覇。26年ミラノ・コルティナ五輪代表選考で重要な位置付けとなるGPファイナル(12月、名古屋)進出を決めた。

男子は鍵山優真(22)=オリエンタルバイオ・中京大=が今季初制覇し、日本男子初の大会3連覇。2位に入った第2戦優勝の佐藤駿(21)=エームサービス・明大=はファイナルに日本男子の一番乗りを決めた。

 やりきったと言わんばかりに、坂本は突き上げた両手を握って振り下ろした。パーフェクト演技での大会2連覇に、地元関西の観衆は熱狂。フリー、合計点での今季世界最高だ。ただ知らされた当人は、ポカンとした表情で「え? そうなんですか? あらまぁ」。この日の主役は素に戻り、会場の笑いを誘った。

 SP1位から出たフリー。冒頭に流れるようなダブルアクセル(2回転半ジャンプ)を決め、7本のジャンプ全てを成功させた。ただ、6分間練習ではエッジ(刃)を覆うケースを外し忘れてリンクに入るほど「余裕がなくて必死だった」。GP第1戦は、17歳の中井亜美(TOKIOインカラミ)に敗れて2位。今季限りでの引退を表明している25歳は「負けたくないですね」と言い、「まだ、次世代に譲るのはもうあと数か月、待っていただいてと思っています」。

笑いを誘いつつ、エースのプライドをのぞかせた。

 今季フリーに選んだのはシャンソンの名曲「愛の讃歌」。13歳で出場した14年ソチ五輪シーズンの全日本選手権(埼玉)。演技が終わった後、同五輪を含む2大会連続代表の鈴木明子さんのSPが目に留まった。「憧れもあるけど、引退の年に、こんな素敵なプログラムを滑れたら素敵だなと思った」。12年経ても思いは変わらなかった。

 今季に向け、中野園子コーチに思いを伝えたが、当初は「花織には早い」と一度はお預け。この日、コーチは改めて「人生経験が足りない」と理由を明かしたが、それでも坂本は「今やらないと、いつやるという感じで。強行突破しました」。

 師弟の理想は高い。中野コーチはこの日のフリーを「60%くらい」と厳しめの評価。坂本も「今日は正直、余裕がなかったので。

60%くらい」。代表選考に影響し、さらに五輪前哨戦ともなるGPファイナルまで約1か月。「もうちょっと、自信をつけられるようにしないといけない」と坂本。師弟の求める完成形は、ミラノ五輪で迎える。(大谷 翔太)

 ◆GPシリーズ 各選手・組は最大2戦に出場可能。2戦合計の成績上位6人・組が、シーズン前半戦の世界一決定戦となるGPファイナル(12月・名古屋)に進出する。今季日本勢では第4戦のNHK杯を終えた時点で、女子は中井亜美(TOKIOインカラミ)と坂本花織が、男子は佐藤駿が出場を決めた。GPは残り2戦で第5戦がスケートアメリカ(14~16日)、第6戦がフィンランド大会(21~23日)。

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