大相撲 ▽九州場所初日(9日、福岡国際センター)

 1日に現役引退を発表した大相撲の元小結・遠藤(35)=追手風=が9日、福岡市内で引退会見を行った。「悔いは一切ない。

本当にいっぱいいっぱいやった。幸せな相撲人生だった」。涙もなく完全燃焼。約12年半の現役生活を晴れやかな表情で振り返った。

 遠藤は日大4年でアマチュア横綱に輝き、13年春場所に幕下10枚目格付け出しでデビューした。ざんばら髪で快進撃を続け、初土俵から所要3場所で新入幕。端正な顔立ちで抜群の人気を誇り、不祥事で低迷していた角界を盛り上げた。「鳥肌が立つような声援をいただいた。最後の最後までもう一回、あの歓声を聞くんだという気持ちで土俵に向かっていた」とファンに感謝を伝えた。

 度重なるけがにも苦しんだ。直近2場所は両膝の手術を受けて全休。決断に至った背景を「もう一度土俵に戻るつもりでリハビリに取り組んでいたが(復帰が)早期には厳しいと思い、気持ちが少しずつ変わってきた」と明かした。

思い出の一番には5月の夏場所千秋楽の朝紅龍戦を挙げた。現役最後の取組を「自分の体は自分が一番よく分かっている。もしかしたら最後になるかもしれないという思いで土俵に上がった」と回想した。

 引退後にやりたいことを聞かれると「子供と走り回りたい。走ることも本場所で勝つためにしなかったので」と笑顔を見せた。今後は北陣親方として部屋付きで後進を指導。「たくさんの方に応援していただける力士を育てたい」と思いを新たにした。(林 直史)

 ◆遠藤に聞く

 ―現役生活は短く感じたか、長く感じたのか。

 「早くも感じたし、思い返すと長く感じた部分もある。いい思い出ばかりで、例えようがない」

 ―けがに苦しんだが、そこから学んだこと。

 「けがをしたことで気付くことも多かったし、精神的にも鍛えられた。良くも悪くもけががあったから成長できた。

(両膝は)手術したので、これからはもっと働いてもらおうかなと思います」

 ―能登半島地震直後の昨年2月には地元・穴水町の避難所を訪問した。

 「言葉ではなかなか表すことはできないけど、今も本当に大変な状況が続く中で前を向いて、必死に一日一日を生きている姿を見ると、元気を与えるどころか、逆に元気をいただく形になった」

 ―一緒に被災地を訪れた大の里ら石川県出身力士たちへのメッセージ。

 「震災があり、心の中でそういった気持ちを持って土俵に上がっていると思う。変わらず精いっぱい相撲を取ってほしい」

 〇…遠藤の引退を追手風部屋の関取衆も残念がった。3学年下ながら兄弟子の大栄翔は「けがで苦しんでいたことを知っていたのでお疲れ様という気持ち」。一番の思い出は「ストイックな姿勢がすごかった」という稽古。日大の後輩で弟弟子の翔猿は「お手本になることが多くてまねをした」。あいさつで会った際に「スーツ姿が似合ってます」と伝えたという。

 八角理事長「痛いと言わない昔の力士だった。うまい相撲を取っていたが、荒々しさがなかった。性格なんだろうけどね。本人は一生懸命にやったと思う。

今後は自分のやってきたことを後輩にどう伝えるかだ」

 ◆遠藤 聖大(えんどう・しょうた)本名・遠藤聖大。1990年10月19日、石川・穴水町生まれ。35歳。金沢学院東高(現金沢学院大付高)から日大に進み、4年時にアマチュア横綱。13年春場所に幕下10枚目格付け出しで初土俵。同年秋場所で新入幕。18年夏場所新小結。最高位は小結。金星7個、殊勲賞1回、敢闘賞1回、技能賞4回。得意は突き、押し、左四つ、寄り。通算は527勝494敗。184センチ、144キロ。

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