◆第15回みやこS・G3(11月9日、京都・ダート1800メートル、不良)

 第15回みやこS・G3は9日、京都競馬場で行われ、先週フォーエバーヤングでブリーダーズカップ(BC)クラシックで快挙を成し遂げた坂井瑠星騎手(28)=栗東・矢作厩舎=の手綱で、2番人気のダブルハートボンドが重賞初制覇。勝ち時計の1分47秒5はダート1800メートルのJRAレコードとなった。

 ホームでも強気の騎乗を貫いた。前半5ハロン59秒3の速い流れで迎えた3角手前。坂井は好位を追走するダブルハートボンドを無理に抑えず、早々と先頭に立った。4角で手綱を押すと、直線半ばで左ステッキを振り下ろす。徐々に小さくなる他馬の蹄音。最後はサイモンザナドゥに迫られたが、勢いは鈍らない。首差でも危なげなく、初タイトルをつかんだ。

 自ら動いて、ねじ伏せる。まるで、フォーエバーヤングで制したBCクラシックを見るようなエスコートでコースレコードを16年半ぶりに、JRAレコードも6年4か月ぶりに塗り替えた。「馬場傾向的にレコードは出ると思っていた。あのペースでもうなっていく手応えで非常に強い内容だったと思います」。デビューから全戦で騎乗。

先週のように相棒を信じていたからこそ攻め抜けた。

 名は体を表す。ダブルハートボンドは額に二つの流星がある顔。さらにはデビューから圧勝続きだった走りでも脚光を浴びた。ただ、脚元が弱く、なかなか順調に使えずに4歳秋の今回もまだ7戦目。キャリアが浅いぶん、今回も当初、予定していたJBCレディスクラシックに賞金面で出走がかなわなかった。「こっちの方が厳しいと思っていた。この時計で走って、びっくりしました」と大久保調教師はうなずく。

 15回目で初の牝馬Vを決め、今後は優先出走権を取ったチャンピオンズC・G1(12月7日、中京)を視野に入れる。「デビュー前から高い素質を感じていたが、なかなか順調に使えなかった。重賞を勝つことができて、この先が楽しみです」と坂井。まだ底知れない女王候補が、頼れる鞍上とともに砂のスター街道を切り開く。

(山本 武志)

 ◆ダブルハートボンド 父キズナ、母パーシステントリー(父スモークグラッケン)。栗東・大久保龍志厩舎所属の牝4歳。北海道安平町・ノーザンファームの生産。通算7戦6勝(うち地方1戦0勝)。総獲得賞金は1億2169万2000円(うち地方1085万円)。重賞初勝利。馬主は(有)シルクレーシング。

編集部おすすめ