大相撲 九州場所3日目(11日、福岡国際センター)

 新弟子らによる前相撲が始まり、モンゴル出身のバトツェツェゲ・オチルサイハン(23)=伊勢ケ浜=が「旭富士」のしこ名で初土俵を踏んだ。同じモンゴル出身の天昇山(21)=玉ノ井=を寄り切って白星デビュー。

第63代横綱のしこ名を受け継いだ規格外の新弟子が、力士としての一歩を力強く踏み出した。

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 伊勢ケ浜部屋に怪物級の力士が入ったと風の噂(うわさ)で聞いたのは4年前だった。前相撲の映像を見て最初に思ったのは「よくぞ耐えた」ということ。同級生が番付を上げていくのはつらかったと思う。研修生として唇をかみしめながら必死に頑張ってきたことにまず敬意を表したい。

 内容は左前まわしを取って力強く前に出た。モンゴル出身で東洋大で実績を積んだ197センチの天昇山を子供扱いにした。私が注目したのは右肩にできた“コブ”。恐らく稽古で必死に当たり続けたのだろう。努力の結晶が右肩にしっかりと刻まれていた。

 体付きは締まったあんこ型で阿武剋に似ている。前相撲から自分のしこ名を継承させた先代の熱い思いも伝わってきた。

“しこ名のバトン”というのはうれしいもの。私の「琴風」というしこ名も門戸は開放している。継ぎたいという力士が出てくれば喜んで譲る覚悟はある。

 順調にいけば幕内上位は狙えるだろう。課題は研究された時に、それを上回る稽古を積むことができるかどうかだ。幕内上位には横綱・大の里のようなスケールの大きな力士が多い。大きな相撲にどう対応するかも今後の宿題だ。それにしても久しぶりに見るのが楽しみな力士が出てきた。(元大関・琴風、スポーツ報知評論家)

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