専門家で作る日本クマネットワーク(1997年設立、茨城県つくば市)はクマによる被害が相次いでいることを受け、被害対策の提言を公表した。「これまでにない科学的な対応や制度の改革が必要」と指摘し、各自治体に全面的に協力するとしている。

 ◆以下、提言

 クマ類による被害は、もはや個人の対策だけでは防ぐことが出来ない状況になっています。最も優先すべき人命確保のため、これまで実施してきた「問題個体の排除」、「被害防除対策」、「人の行動管理」を継続しつつ、その上で中・長期にわたる、これまでにない科学的な対応・制度の改変が急務です。

 人間とクマ類の共存できる社会の実現のために、日本クマネットワーク(JBN)として考える、中・長期的な視点も含んだ被害防止対策について、以下の通り提言します。

 中には法制度や現状の地方自治体の予算や体制等の点で実効性のある手法が確立できていないものも少なくありません。クマ類の専門家が数多く所属するJBNとしてこれらの実現のための取り組みを早急に進めて、各行政とも共有するなど、全面的にご協力いたします。

 〈1〉クマ類と人間のゾーニング(棲み分け)の実現と維持/人間活動域周辺に生息するクマ類の捕獲による生息密度の低下/誘因物管理、緩衝地帯での環境整備の支援、整備手法に関する情報の共有/クマ類と人間との緊張関係の再構築

 〈2〉行政の体制整備

・専門的知識を有し地域に根差した対策を推進できる行政職員の配置/行政による捕獲従事者の確保

 〈3〉個体群管理のための科学的なモニタリングの実施と順応的管理/科学的なモニタリングを実施できる体制の強化/適切な個体群管理のための生息状況/分布状況の定期的な把握/モニタリング結果に基づき施策を調整・修正する順応的管理の実現

 〈4〉行政間及び大学・研究機関・NPO・民間企業等との連携体制の強化/最新の科学的知見や技術的成果を迅速に共有し、現場対応に活かす体制の整備/市民への普及と情報発信の促進 〈5〉以上の各施策を着実に実施するための法整備と予算確保

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