高市早苗首相は12日の参院予算委員会で、2025年度補正予算案にクマ対策として、自治体への支援策を盛り込む考えを示した。青森県選出の立憲民主党・田名部匡代参院幹事長への答弁で明らかにした。

各地で深刻化する被害を受け、専門家らで作る日本クマネットワーク(1997年設立、茨城県つくば市)はクマによる被害が相次いでいることを受け、クマの現状について分析結果を公表している。

 ◆概要 これまでに分かっていること

 〈1〉長期的な分布域の拡大とそれに伴う生息数の増加

 ◆社会の変化 2018年までの40年の間で、クマ類の分布は約2倍に拡大しています。急速な少子高齢化、人口の都市への一極集中に伴う農山村からの人間の撤退に合わせ、クマ類の分布が拡大してきました。

 ◆クマ類を巡る鳥獣行政政策の効果の表れ かつてのヒグマ被害対策の「春グマ駆除」が1990年に廃止され、1990年代以降は西日本を中心に狩猟禁止などの処置が行われました。さらに、1999年の法律(鳥獣保護法)改正により、都道府県知事が策定する特定鳥獣保護管理計画制度が設けられ、クマ類は捕獲上限数を定めることで、過剰に獲りすぎないようにしてきました。

 〈2〉クマ類の秋の主食であるブナ科の果実類(ドングリ類)の不作 

 ◆クマ類の秋の出没が多い地域では、秋の主食である複数種のドングリ類が不作です。これまでも、ドングリ等が不作の年にはクマ類は行動する範囲を広げる傾向があります。そのような状況で、人間活動域にカキやクリ、クルミ、放棄された果樹、電気柵が設置されていない耕作地が存在すると、それらに誘引されてクマ類が人間活動域への出没が促進されます。

 ◆これまでに分かっていないこと(今後明らかにすべきこと)

 〈1〉人身被害(特に死亡例)の急増の背景 従来、クマ類の攻撃は 「身を守るため」や「子グマを守るため」がほとんどであると考えられてきました。しかし、今秋は複数人で行動していても襲われ、あるいは最初から意図的に攻撃する事例が各地で発生しています。これらの行動が、特定のクマ個体の特異な行動なのか、複数のクマが人間への警戒心を低下させている、といったクマ側の特性によるものなのか、人間側の特定の行動などに起因するものなのかについては分かっていません。

 〈2〉これまで出没が確認されなかった地域への出没原因とそこでのクマの行動 今秋はこれまでは出没が確認されなかったような市街地中心部や住宅街で、パニック状態で逃げ惑う状態ではなく、日中でも落ち着いた状態と考えられるようなクマが確認される事例が複数あります。

どのような個体(性齢、栄養状態、過去の出没個体との関係など)が、どのような目的で、市街地に侵入したのかについては、ほとんど分かっていません。

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