今年のエリザベス女王杯・G1(11月16日、京都競馬場・芝2200メートル)は、どんなドラマが生まれるのか。過去の名勝負・ダイワスカーレット(父アグネスタキオン)勝利で幕を閉じた07年に3着、このレースをもって引退したスイープトウショウ(父エンドスウィープ)を振り返る。

 突然だった。「これで引退させる」池添は、パドックで鶴留明雄調教師(当時)からこう告げられた。宝塚記念、エリザベス女王杯、秋華賞とG1を3つも勝たせてくれたスイープトウショウとの突然の別れ。「有終の美を飾らせてやりたい」万感の思いを胸に池添が、力強く手綱を握った。

 史上まれにみる“気まぐれ女王”スイープトウショウ。調教拒否、追い切りを完全にボイコットするなどの激しい気性のうえ、ゲート難もあった。しかし、この引退レースでは返し馬もできた。ゲートも嫌がらずに。そして、半馬身ほどの出遅れというスイープにとっての“ロケットスタート”も決めた。

 前日発売で1番人気のダービー馬ウオッカが右寛ハ行で早朝に出走を取り消す混乱ムードのなか、レースでは、ダイワスカーレットの強さだけが際立った。スタートを出てハナに立つと、鮮やかな独り舞台を演じた。19戦をともにしてきた主戦はラストランも切れ味を信じてインの7番手でためるだけためた。

ただ、ダイワスカーレットが作る流れは一向に上がらない。しびれるような手応えで直線に向き、追いまくったが差は詰まらず3着まで。上がり3ハロンは最速タイの33秒9。最後も女傑らしい切れ味だった。

 屈指の瞬発力を武器に、秋華賞、エリザベス女王杯、宝塚記念のG1を3勝。宝塚記念では05年の有馬記念でディープインパクトを負かしたハーツクライすらも完封するなど歴史的にみても最強クラスの牝馬だが、調整は苦労の連続だった。元調教師の鶴留さんは「さみしいけれどホッとした気持ちも」と、苦楽をともにした3年8か月を思い浮かべて苦笑しつつコメントしていた。

 

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