安青錦「今場所でできると思っていなかった」想定外の“最速”大関昇進で伝達式に両親の来日間に合わず

　大相撲九州場所で初優勝を果たし、大関昇進を確実にした関脇・安青錦（２１）＝安治川＝が千秋楽から一夜明けた２４日、福岡・久留米市の部屋宿舎で会見を行った。母国・ウクライナからの反響、ドイツで暮らす両親とのやりとりの様子を語った。

　午前１０時頃、安青錦がまぶたをこすりながら、会見場に姿を見せた。優勝の高揚感からか、前夜は日付が変わった午前５時にようやく寝付いた。「これまでにはなかった。ずっとボーッとしていた」。優勝を実感できたのはこの日「起きてから」だったという。

　寝ている間に快挙は母国まで届いた。千秋楽後にはウクライナの友達や知り合いから連絡がたくさん届いた。「会見が終わってから、（返事を）少しずつ返していこうかな」と苦笑い。ドイツに住む両親には、優勝祝賀会の会場へ向かう道中で電話。「おかげさまで優勝することできました」と報告すると、母のスヴェトラーナさんは泣いて喜んだという。

　所要１４場所での大関昇進は、年６場所制となった１９５８年以降の初土俵で付け出しを除くと最速。伝達式は２６日に行われる予定だ。しかし、「（渡航）ビザを取るのにも時間がかかる。すぐには来られない。今場所で（昇進）できると思っていなかった」と、自身の想定を超えるスピード出世で、晴れの日の両親の来日は間に合わず。注目の口上については「まだ考えていない。『昨日、親方に自分で考えろ』と言われたが、『頑張る』しか出てこない」と冗談交じりに話した。

　レスリング仕込みの持ち前の頭を下げた前傾姿勢の取り口で、関取昇進から全て２ケタ白星と抜群の安定感を誇る。いつか壁に当たることへの恐怖心を問われると「自分が壁だと思ったらそこで壁になる。失敗はない。全部が経験」と言い切った。来年初場所（１月１１日初日、東京・両国国技館）で新大関優勝となれば、０６年夏場所の白鵬（元横綱）以来の快挙となる。

　◆安青錦に聞く

　―優勝への意識はいつぐらいから。

　「１４日目終わってから。その前はあまり意識しなかった。両横綱が先頭で１３日目に大の里関に負けたので、全く意識しなかった」

　―１３日目に負けて優勝は難しいと思った？

　「直接対決で負けている。もう当たることはないから、今場所は厳しいかなと思っていた。１４日目に大の里関が負けて、自分が勝って、そこから少しチャンスがあるのではないかなという感じがした」

　―優勝を決めて師匠の安治川親方（元関脇・安美錦）に報告した時は。

　「うれしかった。優勝して一番報告したかった人なので。自分はこれからだが、一つ恩返しができてうれしかった」

　―大関昇進が確実に。

　「優勝したという実感がやっと湧いてきたが、大関になれるということは、まだ全く考えていない」

　◆安青錦　新大（あおにしき・あらた）本名ヤブグシシン・ダニーロ。