今年のジャパンカップ・G1(11月30日、東京競馬場・芝2400メートル)は、どんなドラマが生まれるのか。過去の名勝負・20年勝ち馬のアーモンドアイ(ルメール騎手が騎乗)を振り返る。

史上初めて3冠馬3頭が激突。現役最後のレースとなった1番人気のアーモンドアイ(牝5歳、国枝栄厩舎)がG1・9勝目を挙げて有終の美を飾った。無敗の3歳馬コントレイル(2着)と、この年の3冠牝馬デアリングタクト(3着)を相手に最強を証明した。

 さあ、行こう―。ルメールがゴーサインを出すと、アーモンドアイはうれしそうにグンとスピードを上げた。最後の直線、残り400メートル付近で仕掛けると、しびれるような手応えで風を感じた。「(後ろから音は)何も聞こえなかった。手前を替えたか、息が入ったか。アーモンドアイの上で集中していました」。残り100メートル手前で一気に先頭に躍り出ると、ゴールまでは2人だけの世界だった。

 内の2番枠から好スタートを決め、好位5番手の向こう正面で前にグローリーヴェイズを置くと、ぴたりと折り合った。大逃げを打ったキセキが引っ張る、よどみないペースが絶好のリズムを生み「この感じだったら勝てると思った」と鞍上。

直線を向く前には勝利を確信していた。

 実は、アーモンドアイを管理する国枝調教師は日本ダービー凱旋門賞への挑戦を意識した時期があったという。3歳時のシンザン記念、桜花賞の勝ちっぷりはそれほど圧倒的だった。プランは成長度合や馬場適性などが考慮され幻に終わったが、そんな“規格外の強さ”は、引退の当日まで成長曲線を描き続けた。「3歳のジャパンCは(2分20秒6のJRAレコードで)素晴らしかった。でも、今年は3冠馬が3頭いて、改めて彼女の強さを見せてくれた。前走の天皇賞・秋の後にパワーアップして、今日が(強さの)トップだったかもしれない」とルメール。決してベストとは言えない2400メートルで披露した衝撃の走りは奇跡的だ。

 17年8月のデビュー戦はまさかの2着。だが、続く10月の未勝利戦を3馬身半差で飾ってから牝馬3冠、そしてドバイ・ターフでの海外G1初制覇まで一気の7連勝。その後も秋の天皇賞連覇など、数々の名馬による偉業を超えてきた。

 人馬一体で駆け抜けた4年間。

ウィニングランでは別れを惜しむようにゆっくり、ゆっくりと歩いた。自らが持つ記録を更新する芝G1・9勝目。それを現役最後のレースで飾った世紀の馬、アーモンドアイ。「最後のレースで、ちょっと特別でした」と振り返ったルメールだが、天皇賞・秋で見せた涙はない。「今日はサヨナラパーティーでしたね(笑い)。さすがアーモンドアイでした」。感傷にふけることさえ忘れさせる強さ。雲間から差し込む光を背にした姿は神々しくもあった。

 最後にルメールは「アーモンドアイの、競馬のストーリーは終わりました。でも、アーモンドアイのストーリーは終わっていない。いい子供をつくってくれたら乗りたい」と、さらなる夢の続きに思いをはせた。不滅のV9という栄光の記録と記憶を刻み、その美しい「瞳」は競馬史に残る最高の宝物となった。

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