これまで、世界三大映画祭で女優賞を獲得した日本俳優は、演技力に定評のある人ばかり。演技派として、ほとんど“不動の地位”にいる女優が、映画祭でさらにハクを付けるというケースが多かった。
受賞作「急に具合が悪くなる」(濱口竜介監督、6月19日公開)では、哲学に造詣の深い舞台演出家でステージ4のがんとも闘いながら活動を続ける女性を演じた。役を聞くと暗く、重苦しく、湿っぽい作品を想像するだろう。しかし、そうならなかったのがこの映画のすごいところで、岡本の存在は大きい。
役の女性は悲壮感を感じさせない。ボーイッシュでさっそうとしていて、すがすがしさすら感じさせる。岡本は女優歴が豊富でないのに、変な力みもない。たたずまいから異質なモノが漂う。自分がいかに見られているか、絶えず自問自答を強いられるモデル経験を通して培われたのだろうか。
濱口竜介監督が難役を演じる岡本に対し、役を温められるだけの十分な準備期間を与えたのもよかった。“長回し”の映像効果もあるのか、何度かドキュメンタリーを見ている錯覚に陥った。見る者に「演じている」ことを忘れさせてしまう力。
◆三大映画祭(カンヌ、ベネチア、ベルリン)での日本人の男優・女優賞受賞者※敬称略
1961 ベネチア 三船敏郎 「用心棒」(黒澤明監督)
1964 ベルリン 左幸子 「にっぽん昆虫記」(今村昌平監督)「彼女と彼」(羽仁進監督)
1965 ベネチア 三船敏郎 「赤ひげ」(黒澤明監督)
1975 ベルリン 田中絹代 「サンダカン八番娼館 望郷」(熊井啓監督)
2004 カンヌ 柳楽優弥 「誰も知らない」(是枝裕和監督)
2010 ベルリン 寺島しのぶ 「キャタピラー」(若松孝二監督)
2014 ベルリン 黒木華 「小さいおうち」(山田洋次監督)
2023 カンヌ 役所広司 「パーフェクトデイズ」(ヴィム・ヴェンダース監督)

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