第79回カンヌ国際映画祭で、濱口竜介監督の映画「急に具合が悪くなる」(6月19日公開)にモデルで女優の岡本多緒(41)が、ダブル主演したベルギー出身の女優ヴィルジニー・エフィラ(49)と共に女優賞を受賞した。本紙映画担当者が、同映画祭では日本人初となる女優賞受賞の要因を分析した。

 濱口監督は「役者ありき」ではなく、「物語ありき」で映画を作る監督。「物語に合っているのか、それが大事。どんなに知名度のある俳優でも物語に合っていないと、観客からの支持を得られない」と語る。

 クランクイン前にじっくり脚本を読み合わせ、ごく自然な会話に見せるのも、濱口監督ならではの演出法だ。エフィラと岡本は、監督が理想とする物語を体現する存在としてオーディションで選ばれ、役柄同様に言葉も国境も超えて心を通わせた。

 岡本が演じた真理は末期がんに冒され、いつ容体が急変するのか分からない状態。それでもマリー=ルー(エフィラ)と交流することで、前向きな希望を見いだし、軽やかに生きる。病状が進行する様子は生々しく、それにつれてマリー=ルーの存在が大きくなっていく。死への恐怖と闘いながらも冷静さを失わず、けなげに生きる姿が観客、そして審査員の心を動かした。

 キャスティングも演出も明確に物語を優先することが、結果的に役者の魅力を引き出すことにつながる。濱口監督のぶれない姿勢と、岡本がその指示を忠実に表現したことが、日本映画初の栄冠を引き寄せた。(有野 博幸)

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