日本代表はW杯で過去2度、PK戦で敗退した。10年南アフリカ大会決勝トーナメント(T)1回戦は0―0でPK戦に入り、3―5でパラグアイに敗れて初の8強入りを逃した。
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今でもW杯のたびに鮮明に思い出す。10年南ア大会、8強入りをかけたパラグアイ戦は0―0のまま延長戦が終わり、PK戦に入った。後攻の日本は2人が決めて2―2。南アの民族楽器ブブゼラの音が鳴り響く中、岡田武史監督から3番手に指名されていた駒野は、ゆっくりとPKスポットへ進んだ。
「これまでのキッカーとGKの駆け引き、コースを踏まえて、どこに蹴ろうか、と考えながら向かった。(蹴る方向を決めたのは)歩いている時。自分から見て左側の方へよく蹴っているので、そっちを選んだ。緊張感はなく、試合と同じ気持ちのままだった」
確かな自信があった。PKは中学以来外したことがなく、07年アジア杯でも2本決めていた。
「最初はチームメートもそっとしておいてくれて、(帰国時に)『俺が蹴ったら外している』という声をかけてもらった。岡田さんも『(駒野は)悪くないよ』と。ただ(関西)空港の到着ロビーを歩く時も少し奥を歩いた。少し離れていないと(視線が)怖かった。日本に帰ってきてからも外に出るのが怖かった」
自宅にこもったが、テレビをつけるとPK失敗の場面が流れた。気分転換にと、妻・映己子(えみこ)さんが沖縄への家族旅行を提案してくれた。5日間、南国の空気に触れ、視線が徐々に上がっていった。
「(後で)写真を見たら、徐々に笑顔が出るようになった。家族がいたからこそ、前向きになれた。(帰国直後は)休みたい、という気持ちが強かったが、日に日に、やっぱりサッカーがしたい、ボールを蹴りたい、と思い始めた」
あれから16年。駒野は「GKとの駆け引きに負けた」と振り返った上で「PKは運と言うが、決して運ではない」と言い切る。
「1対1の局面なので、蹴るまでの駆け引き、お互いの目線、GKの動きがある。それも含め、どこに蹴るのか、思ったところに蹴れたのか、そこに蹴れるキックの質と精度があったのか。そこも含めてお互いの技術。自分はPKは運だとは思わない」
前回カタールW杯、日本は決勝T1回戦クロアチア戦でPK戦の末に敗れ、8強入りを逃した。“鬼門”のPK戦対策に、森保一監督は現役時にセットプレーが得意だった中村俊輔氏をコーチ陣に加え、PK練習にも時間を使うなど技術を磨いてきた。決勝Tに進めば、人生をも左右するPK戦が待つ。当時は挙手制だったが、選手の責任が増すことを考え、指名制の導入も検討している。8強入り、そしてその先を目指す後輩たちに駒野はエールを送った。
「(PK対策も含め)今やっていることに自信を持って戦えば、ベスト16の壁は破れる。そこを突破すれば、もっと上を目指せる。どうしても16になった時は意識するので、突破した時は壁がぶち壊れて、より日本の成長につながると思うので、頑張って欲しい」(敬称略)
◆日本代表の過去W杯のPK戦
▼10年南ア・決勝T1回戦パラグアイ戦(3―5) 0―0で延長戦が終わり、PK戦へ。後攻の日本は遠藤保仁、長谷部誠が成功するも、3番手の駒野が失敗。続く本田圭佑は決めるが、相手は5人全員が成功し、初の8強を逃した。
▼22年カタール・決勝T1回戦クロアチア戦(1―3) 前田大然が前半に先制弾を決めたが、後半に同点とされる。そのままスコアが動かず、PK戦へ。1番手の南野拓実のキックがセーブされ、続く三笘薫も失敗。3番手の浅野拓磨は決めたが、4番手の吉田麻也が相手GKに阻まれた。
〇…駒野氏は22年の引退後、自身がプロデビューした広島のアカデミーでコーチを務めている。現在はジュニアのコーチとして小学生年代の指導にあたっており、「チャレンジをやり続けること。自分で限界を決めないこと」を伝えているという。
◆駒野 友一(こまの・ゆういち)1981年7月25日、和歌山県生まれ。44歳。広島の下部組織から2000年にプロ契約。磐田、FC東京、福岡を経て、22年に今治で現役引退。J1通算374試合19得点。12年にJリーグベストイレブン受賞。日本代表は05年8月にデビューし、W杯は06年ドイツ、10年南アフリカに出場。A代表通算78試合1得点。右利き。現役時のポジションはサイドバック。
◆取材後記 日本の過去のW杯で、敗退時にここまで一選手に焦点が当てられたのは、南アフリカ大会以外ないだろう。
PKを外した時、選手は大きな責任を背負う。それまで活躍しても一気に“戦犯”扱いされることもある。「指名制、立候補制のどちらにしろ、PKを蹴ることはすごく勇気がいる。まずは蹴ったことを褒めてあげることが大事」が、PKを外した選手に伝えたいメッセージだという。W杯開幕を前に聞いた、本人だから口にできる言葉には重みがあった。(サッカー担当・浅岡 諒祐)

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