11日(日本時間12日)開幕の北中米W杯に出場する日本代表は7日、メキシコ・モンテレイでの事前合宿の練習を打ち上げ、本格的な開幕モードに突入した。スポーツ報知では大会中、2024年に直木賞を受賞した作家・万城目(まきめ)学氏(50)が日本代表戦の観戦記「万オブ・ザ・マッチ」を執筆する。
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スポーツ報知をご覧のみなさま、お久しぶりです。万城目学です。W杯での寄稿、今回で4大会連続ですか。長いお付き合いになりましたな…。よく考えれば、森保監督のW杯の道のりとも結構カブっているんですね。ブラジル大会の無念を経て、森保さんがコーチとして戦ったロシア大会。見事な采配でスペイン・ドイツを破ったカタール大会。そして今回。いまの選手の言動を見ていると、「現実をキチンと見ていて大人だなあ」って感心します。選手が言うブラジル大会時の「優勝」といまの「優勝」は、聞こえ方が違う。
5月31日のアイスランド戦は僕も取材のため国立競技場で観戦して、監督会見も潜入しました。思ったのは、森保さんの自信と圧倒的ボス感。会見終わるよっていうのを目だけで進行の人に伝えるとか、周囲の雰囲気を含めて組織をうまくコントロールしていましたね。
何よりビックリしたのは、森保さんの髪形! 直で見なきゃ気づかなかった。とにかく生まれて初めて見ました。分けてもいない、何もしていないように見えて、かつ何の違和感もない。そのまま生えた感じの髪が頭の形に完全フィットしているんですよ。現役時代からずっと、広島で月1回カットしてもらっているんでしょう?【注】 その人の腕が良くなりすぎてて、もはや髪頭一体化。
ヘアから察するのは、森保さんは、全てをなじませていく作業がメチャクチャ好きなんやろなってこと。なじまないことがイヤ。組織もチーム戦術も、フィットさせることに長い時間をかける人なんじゃないですか? いまや森保さんと代表も一体化。もし今大会で退任して新体制に移行したとしても、みんな気づかないのではないでしょうか?
過去3大会の連載を見返すと、W杯前はだいたい懐疑的なことを書いていますね。
でも、今回はグループリーグ2勝1分けくらいで突破できるんじゃないかという「信頼感」がありますね。「期待感」ではなく「信頼感」。三笘選手不在のガッカリ感があるとはいえ、できる準備は全部やっていて、どんな試合も崩れることなく、一定水準のプレーができると思わせてくれている。森保さんは時間をかけて「信頼感」をもフィットさせ、日本人の心を捉えている気がします。
僕自身、1993年にJリーグができたことがきっかけで、大いにサッカーへの興味が湧きました。直後に「ドーハの悲劇」。96年アトランタ五輪での「マイアミの奇跡」。初W杯となった98年フランス大会、ゴン中山の1点だけで3連敗したときの虚脱感。そして、中田英寿選手がイタリアに行くようになりました。世界にぶつかっては時にはたたき落とされ、実力を上げていく過程がおもしろかった。
僕のW杯コラムは、日本が負ければ終了が基本ルールです。過去を振り返れば、日本代表についての執筆回数はベスト16に進出したロシア&カタール大会の4回が最高でした。今回は試合が増えて、16強なら5試合になります。ベスト8に進出して過去最多の6回は書きたい…のですが、さすがに執筆がキツそう。選手のしんどさとは違いますけど、「扉を開ける」というのは大変ですよ。6回分の原稿があったら短編小説1本になる。じゃあ、そっちをしろという話で。
あ、思い出した。カタール大会後、24年に直木賞を取ったんですが、受賞会見で「わが社(報知新聞)でサッカー連載を書いたことが受賞の役に立ったか」みたいな質問をされました。会見なんで「役に立ったかも」とか答えましたけど、いま本音言います。
そんなん関係ないに決まってるやん!(談)
【注】森保監督は現役時代だった20代の頃から、広島市の「ヘアサロンOKIMOTO」に30年以上通い続けている。
◆過去3大会のW杯
◆14年ブラジル 本田圭佑を中心としたザック・ジャパンは1次リーグ(L)初戦でコートジボワールに1―2で逆転負け。ギリシャに0―0、コロンビアに1―4で1次L敗退。「史上最強」と言われ主導権を握るサッカーで「世界一」を掲げたが、遠く及ばず。
◆18年ロシア 開幕の約2か月前、解任されたハリルホジッチ監督の後を受けて西野朗監督が就任した。ブラジルW杯の悔しさ知る香川真司、本田らを選出。コロンビアに2―1で白星発進し、セネガルに2―2。ポーランドには0―1で敗れたが2位突破。決勝トーナメント(T)1回戦では強豪ベルギーから一時2点のリードを奪ったが、追いつかれ、終了間際のカウンターから失点。2―3で敗退した。「ロストフの悲劇」と呼ばれる。
◆22年カタール 森保ジャパンは初戦で、ドイツに2―1で逆転勝利。
◆万城目 学(まきめ・まなぶ)1976年2月27日、大阪市生まれ。50歳。京大法学部卒。2年間の会社勤務を経て、2006年「鴨川ホルモー」でボイルドエッグズ新人賞を受賞し、デビュー。07年「鹿男あをによし」、09年「プリンセス・トヨトミ」など、ドラマ・映画化された小説多数。大会期間中の24日には新刊「ホルモー燦燦」が発売される。

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