◆報知新聞社後援 第75回全日本大学野球選手権記念大会▽1回戦 国際武道大3―5東日本国際大(8日・神宮)

 逸材の実力を見定めるスカウトたちの眼差しは熱く、多忙な中にも喜びが感じられる。

 大学日本一を決める戦い「第75回全日本大学野球選手権記念大会」が9日、神宮と東京ドームで開幕した。

初日のこの日、行われたのは神宮3試合、東京ドーム4試合の計7試合。普段は全国各地の担当エリア内を駆け巡るスカウトたちも、大会序盤は東京に集結し、担当外も含めてドラフト対象選手のクロスチェックを行う。この日はせわしく両球場を行き来する姿が見られた。

 各リーグの王者が集う大会ゆえに、攻防はハイレベル。その中で日頃から培った技術を発揮できるか。高校野球なら甲子園大会、社会人野球なら都市対抗大会と同様、重圧のかかる全国の舞台でのパフォーマンスは、評価に直結する。

 直近6大会の表彰選手を見れば、

【19年】明大・森下暢仁(広島)

【21年】慶大・正木智也(ソフトバンク)、増居翔太(ヤクルト)、渡部遼人(オリックス)

【22年】亜大・田中幹也(中日)、上武大・進藤勇也(日本ハム)

【23年】青学大・常広羽也斗(広島)、明大・小島大河(西武)

【24年】青学大・佐々木泰(広島)、早大・吉納翼(楽天)

【25年】東北福祉大・桜井頼之介(中日)

 と、そうそうたる顔ぶれが並ぶ。熱戦から、未来を切り拓くきっかけをつかんできたことが分かる。

 高校時代、一度は失意のどん底にあったこの男にも、スカウトたちの熱視線が注がれた。東日本国際大の黒田義信外野手。九州国際大付ではプロ注目の好打者として鳴らし、侍ジャパン高校日本代表にも選出された。プロ志望届を提出したが、惜しくも指名漏れ。

進学後、フィジカル面でも着実に力をつけ、再びドラフトで注目されるに至った。

 この日は0-3で迎えた5回1死満塁、中犠飛で反撃ムードを演出すると、同点の7回1死一塁では右翼線二塁打。神宮の杜で躍動した。

 その姿をまぶたに焼き付けていたのが、日本ハムの栗山英樹CBO(65)だ。コメントを求めると、こう言葉を紡いでくれた。

 「投げたり打ったり、走ったり。そういう姿がいいよね。技術はもちろんなんだけど、野球に対する思いって、姿に出るから。野球に対する向き合い方がいいなって。将来、楽しみです」

 メモを取りながら、思った。野球界はデータサイエンスの時代である。あらゆるパフォーマンスが数値化され、各球団ともチーム強化に役立てている。

分析を重ね、蓄積された数字は説得力を持ち、決断の大きな根拠になり得る。

 それでも-。

 野球は生身の人間による営みであり、闘いだ。チームへの献身的な姿勢や、劣勢でも下を向かずにファイティングポーズを取れるかは、数値化されない。ビデオ動画では判断できない。

 スカウト陣はそういった部分も見極めるため、強烈な太陽光線や雨風を受け、朝から晩まで野球場のプラスチック椅子に腰掛けて、目を光らせている。

 人を見いだし、世に出す。価値ある仕事である。

 試合後、黒田に聞いてみた。秋のドラフト会議への思いは、いかがですか?

 「一番はチームです。この東日本国際大というチームで、どう勝っていくかが一番大切だと思っています。それに準じて、自分の個人の成績がついてくる。

自分はそういう思いでやっていきたいと考えています」

 “野球に対する向き合い方”が魅力的な若者にまた一人、出会えた。熱闘を通じて、今年はどんなドラマが生まれるのだろう。喜びを胸に報じていきたい。(編集委員・加藤弘士)

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