馬トク報知で過去の名勝負を当時の記事から振り返る【競走伝】。今回は特別編で、キタサンブラックが9着に沈んだ2017年の宝塚記念を取り上げる。

大阪杯、天皇賞・春からのG1・3連勝を狙ったが、まさかの9着。今年は息子のクロワデュノールに自らが成し遂げられなかった偉業を託すことになる。

 直線のどよめきとともに夢が消えた。直線半ばからどんどん遠くなっていくライバルたちの背中。単勝1・4倍に推されたキタサンブラックがまさかの9着に沈んだ。「走らなかったですね。正直、よく分からない。ここまで(負けたの)は初めてだから。僕自身、残念」。14着に敗れた15年日本ダービー(北村宏騎乗)以来、2度目の馬券圏外。予想もしなかった結果に武豊は肩を落とした。

 

 シュヴァルグラン、シャケトラを行かせて3番手を追走する普段の競馬。

向こう正面で多少行きたがる面は見せたが、明確な敗因が見えない。「馬場は影響するほどじゃなかった。状態も返し馬の感じも悪くなかった。レースで不利があったわけじゃない。全部勝つっていうのは難しいですね、やっぱり」とユタカ。大阪杯、天皇賞に続く、史上初の春の古馬3冠制覇ははかなく散った。

 

 自信を持って送り出した清水久調教師も首をかしげるばかりだ。「予想外の馬が行ったが、何が行こうと自分の競馬をすればいいので。今まではまくるくらいの勢いだったが、テンの勢いがいつもの感じではなかった。最後は完全に止まっている。馬場なのかな。グランプリ、勝てないですね」。

3期連続でのファン投票1位に応えられず、唇をかんだ。

 

 この結果を受け、北島三郎オーナーは登録していた凱旋門賞、愛チャンピオンSの断念を明言した。「これが勝負の世界。今日は運がなかった。この前(天皇賞・春)も多少走っているし、その前(大阪杯)も勝たせてもらって、馬も疲れている。『疲れている』と俺に言いたかったんじゃないかな。ずっと頑張りっぱなしで、本当に感謝してる。夏はゆっくりさせて、秋に向けて頑張りたい」と、激闘を続けてきた愛馬を思いやった。

 北島オーナーは秋の目標として天皇賞を選択肢に挙げ、「最後、有馬記念は頑張って出したいな」と続けた。「今のところは(馬体には)問題ないです。しっかり立て直して、秋に出直したいですね」と清水久師。この一戦でG1・5勝馬の輝きが失せることはない。

夏の充電を経て、強いキタサンブラックは戻ってくる。

 その後、秋も古馬中長距離G1・3連戦に挑戦。不良馬場だった天皇賞・秋をまさかの出遅れから豪快に勝つと、ジャパンCこそ3着だったが、北島オーナーの希望通り、ラストランとなった有馬記念は鮮やかな逃げ切り勝ち。当時は最多だったG1・7勝目を挙げ、現役を引退。種牡馬としてもイクイノックスやクロワデュノールなど、次々と活躍馬を送り出している。

〈Mデムーロ騎手&堀厩舎でつかんだ前年の「忘れもの」〉

 忘れられない苦い思いを、自らの手で払拭した。サトノクラウンとゴールへ飛び込む瞬間、Mデムーロはガッツポーズとともに言葉にならない叫びでほえた。特別な勝利が、感情を爆発させた。「チョー、うれしい!」 完璧なタクトだった。

 スタート直後から隣の枠だったキタサンブラックを真後ろでマーク。最大のポイントは向こう正面半ばの1000メートル付近。自ら動き、大本命馬を外からつついた。

「ペースが遅かった。キタサンブラックを見ていたけど、自分のリズムが一番大事」と話した鞍上を、堀調教師は「ミルコさんが動いて、他の馬も動く競馬になった。この馬に(流れが)向くよう仕向けたのだと思う」と称賛。絶好の流れに乗り、4コーナーを抜群の手応えで進出。直線で力強く脚を伸ばし、最後はゴール前で鞍上が左右を確認するほどの完全勝利だ。

 「今日はイレ込んでいたくらいで、すごくいいと感じた。おとなしかった大阪杯とは全然違った。自信があった。さすがG1馬」。相棒をたたえたミルコは「去年は悲しかったから。ここで全部の夢がなくなった」ともうひとつの思いを口にした。

 

 1年前の宝塚記念。

2着に敗れたドゥラメンテが左前脚を故障。予定していた凱旋門賞を前に引退が決まった。この一年、海外レースの話題が出ると「ドゥラメンテなら…」とこぼす姿があった。「今年は良かったです」。解放されたように、柔和に笑った。僚馬で雪辱を果たした堀師は「違う馬なので。すみません」と語らなかったが、思いは同じだろう。 昨年12月の香港ヴァーズに続き、国内でもG1制覇を果たした5歳馬の夢は広がる。

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