政府は「スタートアップ育成5か年計画」を2022年11月下旬に策定し、スタートアップの創業数と投資額の両方を拡大させることなどを目標に据えた。
12月14日に東京港区で開かれた大型カンファレンス「FUSE」(フォースタートアップスとCIC JAPAN合同会社 共催)では、経済産業省の吾郷(あごう)進平・大臣官房スタートアップ創出推進政策統括調整官がこの計画について説明したうえで、「積極的に世界のニーズを考えてビジネスを組み立てていくことが大事だ」などとグローバル展開の重要性を強調した。
スタートアップ育成5か年計画は、岸田政権が掲げる「新しい資本主義」の一環として政府の分科会で検討が進められていた。11月28日に決定された内容では、スタートアップへの総投資額を2027年度までに現在の10倍超となる10兆円規模へ拡大させることや、「時価総額1000億円で未上場」と定義したユニコーン企業を将来的に100社生み出すことなどが目標として盛り込まれた。
「FUSE」に登壇した吾郷氏はまず、日本のスタートアップ企業への投資額が年々増加傾向にあることなどに触れたうえで、計画を定めた狙いについて「近年は良い流れにあるが、これをさらに大きく太くして、先をいく世界のスタートアップを追っていこうという思いが込められている」と紹介した。
5か年計画の3本柱は▽人材・ネットワークの構築▽資金供給の強化と出口戦略の多様化、そして▽オープンイノベーションの推進だ。吾郷氏は具体的な施策の例として、起業を目指す若者らをシリコンバレーなどへ派遣することや外国人起業家向けビザの発行の円滑化、それに公共調達を増やすことでスタートアップの売り上げや納入実績を拡大させていくことなどを挙げた。
そのほか、環境問題などの社会課題の解決にも取り組む「インパクトスタートアップ」への重点的な支援や、既存企業とスタートアップが手を組む「オープンイノベーション」を税制上の優遇措置で後押しする構想にも触れた。
吾郷氏は最後に「最大のキーワードはグローバルだ。日本の起業家が世界市場を視野にビジネスを展開し、世界の人材や資金が日本のスタートアップに集まるようにしたい。トヨタやソニー、アップルやグーグルのような企業が生まれ、成長していくように、政府としてもさまざまな施策を強化していく」と締め括った。
「最初から世界のニーズを」吾郷氏
吾郷氏は登壇後、STARTUP DB MAGAZINEの取材に応じた。
吾郷氏はまず、海外の起業家や投資家を日本へ誘致する構想について「大きなイノベーション企業を作っていくには『日本市場をまず考えて、成功したら次は世界』ではなく、最初から世界のニーズを考えてビジネスを組み立てていくことが大事だ」と指摘。創業から早い段階で国際的な人材を獲得したり、投資家の支援を受けたりすることが必要になってくるとした。
そのうえで、誘致に向けた日本の優位性については「日本は科学技術という観点でも世界の集積地のひとつだ。
また、有望な産業について問われると「バイオ分野などは世界的な期待も高いほか、直近ではiSpace社が月着陸船の打ち上げに成功するなど、多様な可能性がある。期待できる分野は多い」と答えた。
海外との連携ではこのほかにも「グローバルスタートアップキャンパス」構想が5か年計画に盛り込まれている。海外のトップクラスの大学や研究者を日本に招き、事業化まで時間や費用がかかるとされる「ディープテック」分野などで国際共同研究を加速させていく。
12月2日に可決・成立した補正予算案には、スタートアップ育成のために過去最大規模の1兆円が盛り込まれた。今後は政策資源を総動員して施策を実現していく方針だ。
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