全宅連・全宅保証協会では、毎年実施している消費者セミナーとして、スペシャルサイト『大人へのトビラ』を公開した。成人年齢引き下げが予定され、18歳で成人してから一人暮らしを始める人に向けて、賃貸借契約の注意点などを紹介したもの。

どんな内容か、紹介していこう。

【今週の住活トピック】
「消費者セミナー2021秋『大人へのトビラ』スペシャルサイト」を公開/全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)・全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証協会)

2022年4月1日から成人年齢が18歳に

スペシャルサイトのテーマの一つが、2022年4月1日からの「成年(成人)年齢の引き下げ」だ。民法改正により、2022年4月1日から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられる。これから高校を卒業し、一人暮らしを始める予定の人たちは、成人として初めて契約という行為をする可能性がある。

サイトでは、民法改正の経緯などに加え、賃貸借契約や売買契約などの不動産の取り引きをする場合、未成年と成年では大きく違う点を説明している。未成年者は親などの保護の下にあるので、契約をする場合に親権者の同意が必要とされ、同意がない契約は原則として取り消すことができる。一方、成年者は単独で契約ができるが、自由に取り消すことはできなくなる。

それだけ、契約について強い責任が生じるわけだ。

はじめての一人暮らし、賃貸借契約の注意点は?

スペシャルサイトのメインテーマは、「一人暮らしの賃貸借契約の注意点」。契約に責任が伴う以上、自身でトラブルのないように注意する必要があるからだ。

来春から成人年齢は18歳に。はじめての一人暮らしは賃貸借契約に注意!

(画像提供/全宅連)

サイトではまず、部屋探しの際には、「入居予定日から逆算してスケジュールを組み、予算を立てて、計画的に取り組むこと」「希望条件を整理し、優先順位を決めておくこと」などのポイントのほか、賃貸住宅の人気の設備や間取りの見方などを紹介している。

そして、住みたい部屋が決まったら、さまざまなルールを確認し、宅地建物取引業者から重要事項の説明を受け、入居時に部屋の状況をきちんと確認することなどの注意点も紹介している。

文字だけでなく、マンガを交えて興味をもてる工夫もしているが、「部屋探しの流れ」「賃貸借契約の基礎知識」「金銭管理の基礎知識」「生活マナーの基礎知識」「こんな時にどうする?(トラブル対策)」など、動画(『はじめての一人暮らしガイドムービー』)で詳しい説明をして、はじめての一人暮らしのガイドとして役立てて欲しいとしている。11月24日には、はじめての一人暮らしの注意点をまとめたアニメーション動画も公開する予定だという。

「連帯保証人」や「原状回復」を理解している?

さて、このサイトでは「連帯保証人」と「退去立会と原状回復」について、詳しく説明している。

「連帯保証人」は家賃の滞納などがあったときに、借りた人と連帯して責任を負う人。親が連帯保証人になることが多いだろう。最近は、連帯保証人の代わりに、家賃保証会社の利用を求めるケースが多い。保証会社は借りる人から保証料を受け取り、滞納時に家賃を立て替えたりする。ただし、家賃を払わなくてよいわけではなく、保証会社はしっかり請求するので、この制度についてよく理解しておく必要がある。

入居中に部屋を損傷させた場合、退去するときに元に戻す義務がある。

これが「原状回復」だ。ただし、国土交通省のガイドラインでは、普通に生活していれば経年劣化などが生じるので、それは原状回復の範囲外としている。こうしたことを理解していないと、貸し手と借り手のどちらが負担すべきかトラブルになったりするので、ガイドラインについても理解しておく必要がある。

賃貸借契約についてさらに理解しておこう

このほか、賃貸借契約に関して注意しておきたいことがあるので、いくつか補足をしておこう。

部屋が気に入って借りたいとなると、優先順位を確保するために「申込金」を求められる場合がある。この申込金は、借りる意思を示して優先的に審査をしてもらうためのものなので、申込金=契約の成立ではない。

申し込んだ後に契約が成立しないこともあれば、契約する前に部屋を借りるのをやめることもできる。この際には、「申込金は返還される」のが原則。一時的に預けたお金という扱いだからだ。申込金を払う場合も「領収書」ではなく「預り証」を受け取ろう。

宅地建物取引業法では、賃貸借契約を結ぶ前に、仲介を行う不動産会社は、入居予定者に対して賃貸物件や契約条件に関する重要事項の説明をしなければならないとしている。これが「重要事項説明」で、必ず書面が提示され、口頭で宅地建物取引士が説明することになっている。

重要なことばかりなので、早めに書面を受け取って内容を確認し、不明点を不動産会社に問い合わせるようにしたい。ただし、不動産会社自身が賃貸住宅の貸し手である場合は、重要事項説明をする義務を負っていない。それでも重要な事項は説明するはずなので、契約前にしっかり確認をしておこう。

「重要事項説明」と同様に重要になるのが、「賃貸借契約書」の確認だ。重要事項説明を受けて、納得したら正式に契約を結ぶことになる。この書面も早めに受け取って、目を通しておくのがよい。

賃料などの支払いルールや敷金などの扱い、部屋を使用する際の禁止事項、契約の解除、原状回復の範囲など、知らないでは済まされない内容が記載されているので、しっかり確認しよう。

おかしいと思っても、その場で契約を取りやめるのはなかなか難しいことだ。やはり事前に書面を受け取って親に見てもらったり、その場に同席してもらったりして、人生の先輩から助言を受けることをオススメしたい。

公開されたサイトでは、「宅地建物取引士」についても説明している。成人になれば、宅地建物取引士などの国家資格が必要な職業に就くこともできる(国家試験合格が前提)ようになる。一方で、酒やたばこなどは健康被害への懸念などから、20歳以上とされたままなのでお忘れなきように。

●関連サイト
「消費者セミナー2021秋『大人へのトビラ』スペシャルサイト」を公開/全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)・全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証協会)
「消費者セミナー2021秋『大人へのトビラ』スペシャルサイト」