里山の風景を残しながら、名古屋市のベッドタウンとして発展する愛知県長久手市。2005年に愛・地球博が開催された場所としても知られる。
「もりのようちえん」を運営するのは、学校法人吉田学園。社会福祉法人愛知たいようの杜の系列施設で、目指すのは、さまざまな世代が共に暮らし、生きる雑木林のようなコミュニティだ。
愛知たいようの杜の事務所を訪れると、隣りにある「もりのようちえん」の園庭からは、子どもたちの「キャー!」「ワー!」という元気な声が聞こえてくる。野外で各自がそれぞれに楽しみ、テンションが上がっている様子はまるで遠足のよう。
「もりのようちえん」は、恵まれた自然環境のなかで多世代と交流する「ゴジカラ村」の一つとして、1992年に設立された。「ここでは何かを教えるのではなく、何も教えません。創立者の吉田一平は、幼児期の子どもにとって、自然のなかでただひたすら自由に遊ぶことが大事だと考えているからです」と愛知たいようの杜の大須賀理事長。
現在210名の園児が在籍し、年少から年長までの園児が混合の縦割りクラス。決められたカリキュラムはなく、登園から降園時間まで、園庭や敷地内の雑木林で自由に遊んで過ごすことができる。
【画像1】先生と手をつないで雑木林を探検(写真撮影:本美安浩)

【画像2】斜面を一気に駆け下りる!最初は転んだ子も、体で感覚を覚えていく(写真撮影:本美安浩)

【画像3】秘密基地に隠れたら、先生に見つからない…!?(写真撮影:本美安浩)

【画像4】「危ないから登っちゃダメ」なんて怒られる心配はナシ!(写真撮影:本美安浩)
自然と共存する昔ながらの暮らしのなかで、好奇心が膨らんでいく子どもたちはそれぞれ木登りをしたり、石を拾ったり。暑い日は木陰に集まり、雨が降ったら雨の日の遊びを自分たちで考えるという。時には田植えや稲刈りをしたり、季節の行事も行う。職員が園児に伝えているのは、「何をしてもいいけれど、お友達と森のことを考えよう」ということ。土を掘りすぎない、植物をむやみに採らないなど、森を守るためのルールを「どうしたらいいと思う?」と園児自身に考えさせている。
雑木林で過ごす日々のなかで、子どもたちは自分で遊びを考え出す楽しさや、友達との関係づくりを覚えていく。幼稚園の時期に、好きな遊びをとことん極めたり、友達と思い切りぶつかり合うことで、小学校で初めて学習する時期になって、「やってみたい!」という好奇心がムクムク湧いてくるのだという。
敷地内にある古民家でのお泊まり保育や、松明の明かりのなか、夜のログハウスで行う卒園式もとても思い出深いものになるそうだ。自然のなかで思い切り遊んで過ごす3年間は、子どもたちを強く優しく成長させるだろう。

【画像5】夜の卒園式が行われるログハウスの園舎(写真撮影:本美安浩)
3歳から6歳までの子が一緒になり、外で頬を赤くして遊ぶ様子を見て、自分の子ども時代を思い出した。自然に触れる機会や異年齢との交流が減っている現代っ子。
HP:http://aichi-skf.ac.jp/map/shosai/shosai04.html