食の天国! シンガポール屋台飯を東京で味わう

 アジア各国を旅していて、一番テンションが上がるのが屋台で食べるご飯。中でもクオリティが高いと言われているのが、多民族が交錯する国・シンガポールです。なにしろ、屋台なのにミシュラン星付き店があるほどです。

 実はシンガポールでは、自炊より外食する家庭の割合が多く、独身者もファミリーも、朝、昼、晩の3食を「ホーカーズ」と呼ばれる屋台街で胃袋を満たすのが日常。「ホーカーズ」はシンガポールのいたるところにあり、中華系、マレー系、インド系、それらの融合したシンガポール系など、さまざまなジャンルの食が楽しめるのです。必然的に料理人たちは腕を競い合うことになり、日々、味がアップグレードされているそう。

 東京・淡路町にある『松記鶏飯』は、そんなシンガポール屋台飯の雰囲気と味を楽しめる日本でも希少なお店。在日シンガポール人はもちろん、商社マン、駐在員などシンガポール在住経験がある人たちが、遠方からわざわざ訪れるほどの人気店なんです。

在日シンガポール人も絶賛! 神田・淡路町『松記鶏飯』の「シンガポール・チキンライス」は東京一うまい

 特にこちらで秀逸なのが“ライス”です。

ライスと言ってもただのご飯ではなく鶏スープで炊いたジャスミンライス、いわゆる「チキンライス(鶏飯)」なんです。それだけ食べても香り、旨みが素晴らしいのですが、今回は『松記鶏飯』でその鶏飯と合わせて食べて欲しいおかずがたくさんあるので、ご紹介しましょう。

在日シンガポール人も絶賛! 神田・淡路町『松記鶏飯』の「シンガポール・チキンライス」は東京一うまい

しっとり柔らかな茹で鶏の「海南鶏飯」

『松記鶏飯』に入店すると、ジャスミンライスを炊いている香りが店中に立ち込めています。食べる前から胃袋を鷲掴みにされ、ほとんどの人が、合言葉のように「海南鶏飯(ハイナンジーファン)」を注文します。

◯ 海南鶏飯とは?
「海南鶏飯」(通称チキンライス)は、中国の南に浮かぶ海南島からシンガポールや東南アジア諸国にもたらされた料理。日本のケチャップ味のチキンライスとは違い、茹で鶏とその茹で汁で炊いたジャスミンライスが載ったワンプレート。そこに各店の自慢のソースが付いてきます。

調理法も食材もシンプルなだけに、店の味の優劣がハッキリわかると言われる料理です。

在日シンガポール人も絶賛! 神田・淡路町『松記鶏飯』の「シンガポール・チキンライス」は東京一うまい

 こちらの「海南鶏飯」をいただいてみると、茹でた鶏肉がしっとりとした柔らかさで、赤(チリ)、黄(生姜)、黒(甘口醤油)の3つの特製ソースで味わえば、まさに異国の風味。さまざまなピリリ感で楽しい味変を堪能できます。

 また「鶏飯」は、米1粒1粒にしっかりと鶏の旨みとコクが深く染み渡っていて、3種のソースを絡めれば、もう自分の意思ではスプーンが止められなくなってしまうほど後を引きます。

在日シンガポール人も絶賛! 神田・淡路町『松記鶏飯』の「シンガポール・チキンライス」は東京一うまい

港町で生まれたスタミナ料理の「肉骨茶」

 続いて、食べて欲しいのが「肉骨茶(バクテー)」です。骨つき肉と漢方、ニンニクを煮込んだ料理。

◯ 肉骨茶とは?
「肉骨茶(バクテー)」は、マレーシアのクアラルンプールの港町クランで発祥したと言われ、マラッカやペナン島、シンガポールなどの各港町に広まった料理です。

もともとは華僑が作っていた薬膳スープに、余って捨てるはずの豚の骨つき肉やモツ、ニンニク等を入れて煮込んだ、港湾労働者のためのスタミナ料理。労働者は熱々の鉄観音茶と合わせて食べていたため、ネーミングに“茶”が付いています。各地に伝わっていき、それぞれの場所によって食材や味付けが変わります。シンガポールスタイルは、あっさりしたタイプです。

在日シンガポール人も絶賛! 神田・淡路町『松記鶏飯』の「シンガポール・チキンライス」は東京一うまい

 こちらの「肉骨茶」は蓋付きの素焼き鍋で登場し、開けると、フワ~ッと八角を中心とした漢方の香りが広がります。中にはグツグツとスープで煮込まれた豚のスペアリブが4~5本、ゴロゴロと。

スープが澄んでいるのはシンガポールスタイル。ちなみにマレーシアスタイルは、ホルモンも漢方もたっぷり入った黒いスープです。

 漢方食材やニンニクは強すぎず、肉や野菜の濃厚な旨みながらあっさりといただけます。そして、骨にたっぷりついた豚肉は、赤身と適度な脂肪で、柔らかでホロホロ。

 付け合わせの「油条」(揚げパン)をヒタヒタ浸して酒のつまみにしてもいいのですが、これもやっぱり別途「チキンライス(鶏飯)」(並210円、大310円)を注文して、ライスにスープをたっぷりかけて食べるのがオススメです。

在日シンガポール人も絶賛! 神田・淡路町『松記鶏飯』の「シンガポール・チキンライス」は東京一うまい

これもシンガポール料理

在日シンガポール人も絶賛! 神田・淡路町『松記鶏飯』の「シンガポール・チキンライス」は東京一うまい

 続いて「クリスピーポーク」です。

一般的には香港のローカルフードとして有名ですが、実は、シンガポールの「ホーカーズ」でも定番メニュー。香港より美味しいと評されている店がたくさんあるのです。

 こちらの店の「クリスピーポーク」も絶品です。口に入れると、カリカリとした皮、ジューシーな肉がほろり。とくに皮目の香ばしさや塩気が絶妙で、これも「チキンライス(鶏飯)」の上に載せガッツリ食べるのがオススメです。

在日シンガポール人も絶賛! 神田・淡路町『松記鶏飯』の「シンガポール・チキンライス」は東京一うまい

 最後は、肉料理ではないのですが、ぜひ食べていただきたいのが「ニョニャアチャー」といういわゆるお漬物です。

レモングラスや東南アジア特有のスパイスがきいており、これがまた、「鶏飯」やその他の肉料理の合間に食べるとクセになる味なんです。

◯ ニョニャ料理とは?
「ニョニャ」というのは、中華系移民男性とマレーシア人女性が結婚し、生まれてきた女の子のことを言います。そこに生まれた食文化が「ニョニャ料理」。中華系の食材や調理法で、マレー系の香辛料や味付けでアレンジされているのが特徴です。代表的なのが、「ラクサ」といわれるカレー麺で、エビをすり潰したペーストに、スパイスやココナッツミルクを合わせ、中華系の麺を入れたものです。

 このほか、「フィッシュヘッドカレー」や「ペーパーチキン」など、まだまだ食べて欲しい料理はいっぱいあるのですが、詳しくは、店主・松本裕介さんに聞いてみて下さい。アジア各国をバックパッカーとして旅してきた松本さん。とくに約15年前に初めて訪れたシンガポールの食にハマり、以来、毎年、何度も訪れ、シンガポールの屋台飯をことごとく食べ歩いているので、一つひとつの料理の発祥や歴史、作り方にとにかく詳しい!

在日シンガポール人も絶賛! 神田・淡路町『松記鶏飯』の「シンガポール・チキンライス」は東京一うまい

「日々、アップデートされる屋台飯の味は訪れるたびに新鮮でエキサイティングです。そんなシンガポールの今の味を少しでも店で紹介できたらと思って、時々、店で新メニューフェアなども開催しています。例えば冬にはマレーシア風の真っ黒なスープの肉骨茶も紹介しますよ」(松本さん)

 松本さんのシンガポールの小ネタを聞きながら料理をいただくと、どんなガイドブックよりも面白い! 「シンガポールにいますぐ行きたい」と思わせてくれる『松記鶏飯』で、まずは「屋台飯の歩き方」の予習をしてみてください。

(撮影・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

在日シンガポール人も絶賛! 神田・淡路町『松記鶏飯』の「シンガポール・チキンライス」は東京一うまい

店名:松記鶏飯

住:東京都千代田区神田司町2-15-1
TEL:03-5577-6883
営:11:30~13:30LO
  18:00~22:00LO
休:日・祝