「旅先で旨いものが食べたければ、タクシードライバーに聞くのが一番」と言います。そこでB級グルメに精通する現役運転手・荒川治さんにイチオシのお店へ案内してもらいます。

 先日、お客さんを乗せて目白通りを走っていたら、飯田橋一丁目あたりで思わず「あっ」と小さな声を上げてしまいました。その理由は、東京一美味しいとんかつと言う人も多い『とんかつ檍(あおき)』のカツカレー専門店『いっぺこっぺ』を見かけたからです。こんなところに? と驚きました。

『とんかつ檍』といえば、蒲田、大門、銀座に店舗を構えるとんかつの名店。そして、その『檍』のとんかつを使用したカツカレー専門店が『いっぺこっぺ』です。こちらは蒲田と大門にあります。

どの店も、昼時には大行列。その『いっぺこっぺ』が、飯田橋にあったのです。調べてみると、今年10月16日にオープンしたばかり。そう、つい最近できたばかりだったんです。

旨い店はタクシー運転手に訊け! 『いっぺこっぺ 飯田橋店』で“東京一美味しいカツカレー”を食べてきた

 思い返してみれば、『とんかつ檍』の大門店で初めて「上ロースかつ定食」を食べたのは3年前くらいだったでしょうか。今でも、その時のことはよく覚えています。

『檍』のとんかつは、千葉県の銘柄豚「林SPF」を使用。その豚の美味しさを生かすための衣や揚げ方はもちろん、食べ方も「塩で」というこだわり。

旨い店はタクシー運転手に訊け! 『いっぺこっぺ 飯田橋店』で“東京一美味しいカツカレー”を食べてきた

 しかし、当時の私はとんかつは断固、ソース派。しぶしぶ、最初の一口は何もつけずに食べてみたんです。衣がサクッと音を立て、肉の脂がじゅわ~っと口に広がった瞬間、「塩で」という意味がわかりました。脂がとても甘いのです。

 よくテレビで、タレントさんが食レポ中に「脂が甘い!」と叫んでいますが、あれを見るたびに「大げさだな」と疑っていたのですが、『檍』の豚の脂は本当に甘みを感じるのです。これをしっかりと味わうには、確かに塩が一番いい。

 つい『檍』のとんかつの話が長くなってしまいましたが、そんな『檍』の絶品とんかつにカレーをかけたら、一体どうなってしまうのでしょうか。気にはなっていたものの、私は『いっぺこっぺ』でカツカレーを食べたことがなかったんです。今回、飯田橋にオープンした『いっぺこっぺ』は、まだ行列の気配がなく、どうやら穴場のよう。そこで早速、食べに行ってきました。

カレーととんかつが別皿の贅沢さ

旨い店はタクシー運転手に訊け! 『いっぺこっぺ 飯田橋店』で“東京一美味しいカツカレー”を食べてきた

 私が『とんかつ檍』でいつも注文するのは「上ロースかつ定食」。これと同様のタイプを食すべく、「上ロースかつカレー」(200g)をオーダーしました。ここでは、注文が入ってから、1つ1つ丁寧に衣をつけて揚げていきます。10分弱ほどして、カレーライスととんかつが別皿で登場しました。

旨い店はタクシー運転手に訊け! 『いっぺこっぺ 飯田橋店』で“東京一美味しいカツカレー”を食べてきた

 普段、私が常連になっている店では、カツカレーを注文する際、必ずカツの上にカレーはかけないでくださいとお願いしています。理由は、とんかつはとんかつだけで味わいたいし、カレーはあくまでもトンカツのソースとして後から味わいたいからです。

でも『いっぺこっぺ』は、そんなわがままを言う必要もなく、最初から別。もう幸せの極みです。

旨い店はタクシー運転手に訊け! 『いっぺこっぺ 飯田橋店』で“東京一美味しいカツカレー”を食べてきた

 手のひらよりも大きい上ロースかつと、シャキシャキのキャベツ。まずはとんかつを塩だけで味わいますが、『檍』同様、ここでも塩を3種類揃えているので、それぞれの違いを試すことができます。「ピンクロックソルト」は、まろやかで優しい塩味、「ヒマラヤ岩塩ナマック」は、硫黄のような強い香りがするパンチ系、「テキサス岩塩」は薫香がするゴージャス系。

旨い店はタクシー運転手に訊け! 『いっぺこっぺ 飯田橋店』で“東京一美味しいカツカレー”を食べてきた

 期待通り『檍』の上ロースかつは、油キレのいいサクサクの衣が芸術のようについており、脂と赤身のバランスがよいお肉の断面はほんのりピンク色。

もちろん柔らかくて、口のなかで脂が広がると、やっぱり最高でした。

旨い店はタクシー運転手に訊け! 『いっぺこっぺ 飯田橋店』で“東京一美味しいカツカレー”を食べてきた

 続いてカレーに浸してとんかつを食べます。そのカレーはとんかつを引き立てるかのごとく旨みがあって、辛すぎず甘すぎず、極上のソースのように深い味。しかも豚肉も入ってるんです。う~ん、さすが豚肉を知り尽くした店が作るカレーです。頭が下がる思いで、キレイに平らげました。

 気に入ると、再訪するのが私の性分。翌週には、一番お得な「ロースかつカレー」を食べにいきました。こちらはワンプレートですが、ちゃ~んと、とんかつはキャベツとご飯の山の上に載っていて、私好み。

旨い店はタクシー運転手に訊け! 『いっぺこっぺ 飯田橋店』で“東京一美味しいカツカレー”を食べてきた

 食べてみると、とんかつもキャベツもツヤツヤのごはんもカレーも、それぞれ美味しいうえ、バランスも最高です。この値段でこの美味しさなら、毎週食べに行きたいと思ってしまいました。やっぱり東京一のとんかつ屋が作るカツカレーは東京一と言ってよいのかもしれません。

『いっぺこっぺ』飯田橋店は、まだ穴場。急いで行ってみて下さい。そのうち、行列必至になること間違いありませんよ。

(撮影・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

旨い店はタクシー運転手に訊け! 『いっぺこっぺ 飯田橋店』で“東京一美味しいカツカレー”を食べてきた

店名:いっぺこっぺ飯田橋店

住:東京都千代田区飯田橋1丁目7-11
営:11:00~15:00、17:00~21:00
休:日

●プロフィール

荒川治

東京都内在住のタクシー運転手。B級グルメ好きが高じて、現職に就き、お客さんを乗車させつつ、美味い店探しで車を回している。中年になってメタボ率300%だが、「死神に肩をたたかれても、美味いものを喰らって笑顔で死んでやる」が信条。写真検索で美味しそうなモノを選び、食べに行って気に入ればとことん通い倒す。でもじつは、自分で料理を作ることも好きで、かなりの腕と評判。