健康効果が再注目され、女性を中心にブームとなっている発酵食品。ワインやチーズなどはもちろんのこと、ぬか床を家で作る人も増えているんだとか。

そんな中、今じわじわ注目を集めているのが「発酵鍋」。

 日本最古の発酵食品とも言われる鮒ずしを鍋料理にアレンジしたものや、中国の伝統的な発酵食を元にした鍋も。独特な酸味がクセになる、リピート確実な3店をご紹介します。

鮒ずしの旨味が溶け出す極上鍋『日本橋 滋乃味』(日本橋)

今年の鍋は発酵がキーワード! 都内で食べられる絶品「発酵鍋」3選

 日本を代表する発酵食品のひとつ鮒ずし。すしのルーツと言われるこのなれ鮓が、大陸から日本に伝わったのは、1400年ほど前のこと。日本最古の発酵食品といっても過言ではないでしょう。

 その鮒ずしの飯いいを使った世にも稀なる発酵鍋を味わえるのが『日本橋 滋の味』。

鮒ずしのふるさと滋賀県のアンテナショップ『ここ滋賀』に併設するレストランです。

「ともすれば廃棄されてしまいがちな鮒ずしの飯を再利用して、その美味しさを伝えられないものかと考えたんです」と料理長の高橋拓未さん。

 そして出来上がったのが、「発酵出汁の旨酸っぱい豚しゃぶ」。ちなみに、飯とは、鮒ずしと一緒に漬け込んだお米のこと。ブルーチーズにも似た独特の匂いと乳酸発酵なればこその個性的な酸味には抵抗のある方もいるかもしれませんが、一度ハマれば病みつきになる魔性の旨さが潜んでいます。

今年の鍋は発酵がキーワード! 都内で食べられる絶品「発酵鍋」3選

 この飯を昆布出汁で溶いた飯出汁で、豚の三枚肉や野菜をしゃぶしゃぶして食すというのだから、ある意味究極の日式発酵鍋です。

豚は、滋賀の豊かな自然に育まれた森本豚を使用。そのストレスなく育った豚の脂の甘みを、飯出汁ならではの旨みを含んだ酸味がまろやかに包みこみ、えもいわれぬ深みのある味わいを醸し出します。

今年の鍋は発酵がキーワード! 都内で食べられる絶品「発酵鍋」3選

 どこか中国南西部に住む少数民族の発酵鍋を彷沸とさせる味なのですが、それもそのはず。なれ鮓のルーツが中国雲南省やタイ北部であることを思えば合点がいきます。歴史が薫るロマンの味をぜひ。

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今年の鍋は発酵がキーワード! 都内で食べられる絶品「発酵鍋」3選

店名:日本橋 滋乃味

住:東京都中央区日本橋2-7-1 ここ滋賀2F
TEL:03-6281-9872
営:11:30~14:30(14:00LO)、17:00~22:00(21:00LO)、土日祝11:30~17:00(16:00LO)、17:00~21:00(20:00LO)
休:不定休

知られざる中国・貴州の納豆火鍋『貴州火鍋』(新小岩)

今年の鍋は発酵がキーワード! 都内で食べられる絶品「発酵鍋」3選

「新小岩」駅から徒歩6分。美食とはあまり縁のなさそうな町(失礼!)にひっそりと佇むのが『貴州火鍋』。

その名のとおり中国・貴州省の料理を供するお店です。

 貴州とは、四川省の南、湖南省の西に位置する山岳地帯。このロケーションで「辛そうだ」と思う方、ご明察です。苗族やトン族など少数民族が多く住むことでも知られており、店長の林敏(リン・ミン)さんは、貴州の中でも辛い唐辛子の産地だという遵義出身。その唐辛子はさまざまな方法で発酵され、多様な料理に使われますが、この「発酵」こそが貴州料理の最大の特徴なのです。

今年の鍋は発酵がキーワード! 都内で食べられる絶品「発酵鍋」3選

「豆鼓火鍋」はこの遵義の郷土料理のひとつ。

貴州の豆鼓は麹で発酵させる通常の豆鼓と異なり、納豆菌で発酵させるのが特徴。つまり日本の納豆に近いのです。ということでこの店の豆鼓火鍋には、日本製納豆を発酵唐辛子と炒めたものを使用しています。その豆鼓を鍋底に沈め、皮つきの豚三枚肉や野菜をザンスイ(主に唐辛子)タレで食べます。

今年の鍋は発酵がキーワード! 都内で食べられる絶品「発酵鍋」3選

 その辛さは強烈で、すぐに身体がじわりと汗ばんでくるほど。しかし、それ以上に発酵による酸味がさわやかで、後を引くのが、「四川より辛さのバリエーションが多いけど、油分は少ない」(林さん)という貴州料理の魅力です。

納豆好き必食の〆もお楽しみに。

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今年の鍋は発酵がキーワード! 都内で食べられる絶品「発酵鍋」3選

店名:貴州火鍋

住:東京都葛飾区新小岩1-55-1 多田ビル1F
TEL:03-3656-6250
営:17:00~23:30
休:日

旨味爆発の発酵魚の鍋『香辣里』(三軒茶屋)

今年の鍋は発酵がキーワード! 都内で食べられる絶品「発酵鍋」3選

 貴州と同じく、湖南料理も辛いことで有名です。でもその辛さは、香辣と表現されるようにスカッとつきぬけるような辛み。辛いだけではなく、発酵や燻製、ハーブを多く使うのも特徴です。その湖南料理を供するのは、かの味坊グループ。本家『味坊』に続き、『羊香味坊』『老酒舗』に続く5店目となるのが、この『香辣里(シャンラーリ)』です。

 そしてその店名を冠する「香辣魚」は、本場では“臭魚”とよばれる郷土料理。季節の白身魚を塩水発酵させ、その漬け汁と発酵唐辛子、鶏スープで蒸し上げ、仕上げにフレッシュな唐辛子とネギをたっぷりと振りかけていただく料理です。

今年の鍋は発酵がキーワード! 都内で食べられる絶品「発酵鍋」3選

 この日の魚はクロソイでした。鯛に似た淡泊な味わいですが、魚をまるごと発酵させているので、旨味が凝縮し、弾力をもった肉がプリプリと口唇を押してきます。

今年の鍋は発酵がキーワード! 都内で食べられる絶品「発酵鍋」3選

 途中で、「ごはんくださ~い」と叫ぶ人、続出すること間違いなしですよ。

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今年の鍋は発酵がキーワード! 都内で食べられる絶品「発酵鍋」3選

店名:香辣里

住:東京都世田谷区太子堂4-23-11 GEMS三軒茶屋7F
TEL:03-6450-8791
営:月~金 11:30~15:00(14:30LO)、18:00~24:00(23:30LO)、土日祝 11:30~24:00(23:30LO)
休:無休

(文◎森脇慶子/秋山都 撮影◎大谷次郎/吉澤健太)

※当記事は『食楽』2019年冬号の記事を再構成したものです