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11月27日(月)放送後記

高齢化社会の中で地域の足をどう守るかというのは、今、さまざまな自治体で課題になっていますが、そうした中、東京都葛飾区の住宅街で、地域の足を守る実証実験が行われています。

住民の熱意で、ついに動き出した住民の足!

これは、低速で、狭い道も走れる電気自動車「グリーンスローモビリティ(グリスロ)」を地域の足として活用していくための実証実験。

どうしてこの実験を始めたのか、葛飾区の東立石と東四つ木という地域について、葛飾区都市整備部交通政策課長の古関伸介さんにお話を伺いました。

葛飾区都市整備部交通政策課 課長 古関伸介さん

「こちらの地域というのが葛飾区の中でも、バスが通っていない地域になっておりまして、かねてより住民の方々から交通の便利さを求めるという御要望がたくさんありました。
そうした中で、地域の中で非常に熱意を持った方々がいらっしゃって、自分たちで運転するよと、そういった機運というのが非常に盛り上がっておりましたので、これに応えるかたちで、区としても交通の支援をさせて頂いたと。
毎日試し試ししながらしているんですけれども、ぜひとも成功させて、ひとつのいいモデルというのを作りたいなと思っております。」

この東立石と東四つ木エリアには、京成押上線の京成立石駅と四ツ木駅がありますが、駅までは、徒歩だと15分以上かかる場所もありますし、バスは両地区の真ん中の幹線道路には通っていますが、そのバス停までも遠い。そして、幹線道路から住宅街の方に入ると、道幅が狭く、一方通行も多いので、バスの導入は難しい地域なのです。

住民からは地域の足を望む声が多かったのですが、なかなか叶わなかった。

しかし、そこに今回、グリスロという足が誕生。

高齢化社会の『地域の足』を自分たちで!の画像はこちら >>
高齢化社会の『地域の足』を自分たちで!

車幅は軽自動車くらいで8人乗り。(運転手さんと介助者も乗るので、乗客は6人乗れます。)時速20キロ未満なので、大きな事故の心配も少ない電気自動車です。

しかも無料で運行するので、二種免許は必要なく、普通自動車免許で運転できるんです。

ということで、運転手さんは地域の方々がボランティアで請け負い、現在、水曜と土曜に、東立石コースと四つ木コース、それぞれ4便ずつ運行しています。

町内にお店が一軒もない!なんとかしなければ!

このグリスロはこの地域の8つの町内会が協力して、区に持ちかけて始まりました。
中でも最初に動き始めた、東四つ木地域、平和橋町会会長の中沢英一さんのお話です。

平和橋町会 中沢英一会長

「自分がとにかく高齢化したらどうしようか、っていうところから始めました。だんだん車は免許返してください。それから自転車も危険ですからもうやめてください、と言う。しかし、それに対する対応がまったく無いんで。自分たちの町は自分たちで作っていくしかないので、こんなこと始めました。
その町会の中で、お店がないっていう町会が何町会かあるんです、一軒もないです。境目くらいにコンビニが一軒あってですね、そうすると高齢者の方たち、雨や風が吹くともう行けないんですね。非常に、都会にありながら不便な場所ですね、これは。走りました、もう。いやあもう、最初涙出ましたね。」

8つの町内会で、町内に食品が買えるお店が一軒もないところがいくつかある、というのは、驚きました。(ちなみに、病院もないそうです。)

カートを押したり、杖をつきながら、ゆっくりゆっくり歩いて、隣の町内との境目のコンビニまで行く姿を見ながら「このままではいけない、なんとか足を確保しなければ」と考え続けること7年!やっと走り出したグリスロを初めて見た時は思わず涙がでた!と。

グリスロ実車。ずいぶん見られますね(**;)

そのグリスロに、私も乗せて頂きました。

「実際にグリスロに乗せて頂きたいと思います。お、発車しました。もっとすごくゆっくりゆっくり走るのかと思ったんですけど、20キロって言っても、そんなに遅―い!っていう感じしませんね。逆にこのくらいのスピードで大丈夫なくらい道が細いっていうことなのかもしれないですけどね。
ずいぶん見られてましたね、今。ホントにみんな結構見ますね、なかなかの恥ずかしさがありますね。」

もちろん早速利用して駅まで出るのは何年ぶり?お買い物が楽になったと好評の声もありましたが、まだあんまり知られていないのも事実で、グリスロに乗っていると、道行く人から「なに?これ?」という感じで、とっても注目されました。まだ走り始めて2か月ですからね!

地域の人がこの地域で安心して暮らせるように

最後に、これからについて、東立石グリーンスローモビリティ協議会の会長、堀越克夫さんにお話を伺いました。

東立石グリーンスローモビリティ協議会 堀越克夫会長

「町会がこうやってやるのは珍しいとは思うんですけども、ねえ、行政にお任せすればそれで済む、かもしれませんけれども、今、業者さんが運行するとなると、運転手不足とか色々問題がありますので、地域でできるとこまでやろうということで、みなさんとやっているところですけどもね。
結局、そういうことで隣近所の方も乗り合わせますし、運転する人も地元の人ですので、地域のコミュニケーションが良くなってですね、また外出するのも楽しみができると思うんですよね。そういうことで、地域の人がこの地域で安心して暮らせるような社会になればいいかなと思ってます。」

乗っているのも運転しているのも地元の人というのは顔見知りの安心感がありますし、いつも乗るのに、どうしたのかしら?という安否確認にも良さそう。

実験は来年3月まで。

堀越さんは、もっと定着して便が増えればと仰っていましたが、実証実験が始まってから、23区の他の区をはじめとした色々な自治体から問い合わせが来ており、注目の高さを感じました。

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